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【イナズマ】仔兎の鼓動

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受け入れられなくても仕方ないのだと、それでもやらなければならないことがあるのだと、自分に言い聞かせて、けれどそんな自分のぐらついた足元を見透かしたように風丸はそう言ったのだ。納得できない、と。
だから嫌われているのだと最初は思っていたし、まさか、風丸にこんな気持ちをぶつけられるなんて思っても見なかった。

「はあ……」

無理に答えようとしなくてもいいと風丸は言ったけれど、口にした以上何かしらの反応が欲しいのが人間じゃないのか、と思う。
特に、自分が好ましいと思っている相手からなら、きっと、余計に。
鬼道は目を閉じて考える。
自分は感情を処理するのに、平均以上に時間がかかるのだ。
だから、考える。
自分の気持ちを掬い取るように、丁寧に、丁寧に。
真剣な気持ちに応えるために。


このところ、ずっと雨が降っていない。
サッカーをするにも、普通に過ごすにも、最適な心地よい陽気だ。
初夏の、深い青を孕んだ空を見上げて、鬼道は一つ息をつく。
昼休みの屋上は意外に閑散としていた。皆、外に出るか教室で過ごしているのだろう。
くすんだ手摺にもたれかかると、下から吹き上がる風が半身を撫でていく。
隣では、風丸の長い髪が、ひらひらとリボンのように踊っていた。
散って、光りながらまた一つにまとまっていく。
そのまま、先から空に溶け出してしまいそうだ。

「天気良いな」
「ああ」
「外で練習できるから助かるな」
「そうだな」
「なんで呼び出したのか聞いてもいいか?」

クラスの違う風丸をわざわざ呼び出したのは鬼道だった。
屋上に行こうと言い出したのは風丸だったけれど。
視線をそちらに向けると、と小さく微笑んだ風丸と目が合った。
昨日と同じ、柔らかい表情だ。

「……風丸に、いくつか聞きたいことがある」
「なんだ?」
「……どうして俺なんだ?」

また、とくとくと早くなっていく鼓動に、無意識に左胸を抑えながら、そちらに向き直る。
風丸は切れ長の瞳を、一回、二回瞬いて、小さく首を傾げた。

「理由、いるのか?」
「……いるというか、純粋な疑問だ。お前は、その……」
「ん?」
「……いや……」

俺のことを嫌っていると思っていた。
口にしようとして、けれど鬼道は言いよどむ。
そんな自分に戸惑い、その鋭い響を耳にすることを恐れたのだと一拍遅れて気づく。