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きくちしげか
きくちしげか
novelistID. 8592
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鬼の恋

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「はは、気に入られちゃったんだね。うらやましいな」
「代わってあげるよ」
ため息をつきながらお茶に手を伸ばした。光正は笑いながら自分のお茶のふたを開けた。
「ありがとう、光正君は沖田さんの事尊敬してるんだね」
その言葉に光正の目が真剣な光を帯びた。
「うん。僕は一番隊に入るために真選組に入隊したんだ」
その一言に気圧されるように黙り込んだ。
「僕は沖田隊長みたいに強くなりたい。強くなってみんなを守りたい」
「光正君・・・」
そういったきり二人は黙ってお茶を飲み出した。ごくごくと喉を鳴らしてお茶を飲むと空になったペットボトルを手にして立ち上がった。光正が誰とも無くしかし強い声で言った。
「一番隊に志願したんだ」
「・・・そう。うまくいくと良いね」
あまりに真剣な表情に新八は曖昧な返事しかできなかった。
「うん。じゃあ、今度はね屯所の屋根の修理と・・・」
はあっとため息をつく新八を振り返りもせず、光正は張り切って次々と仕事の内容を言いながら前を歩いていった。

若い隊士が多くいる真選組は新八にとって、小さい頃に寺子屋で過ごした事を思い出す。もし借金がなかったら今頃こんな風に自分と同じような年齢の同士と学問に精を出したり剣を交えたりしたんだろうかと、ぼんやり考えた。
しかし仕事は慣れた頃に終わる。
新八は最後の日の前の晩、万事屋でお茶を飲みながらため息をついてあと一日で終わる仕事の事を少し寂しいと思いながらぼんやりとしていた。
不意に神楽が視線の中に入って来た。
「新八、いつもどこ行ってるネ」
目を座らせて新八に問いただす。
「え?いや。色々。神楽ちゃんには関係ないよ。休暇中なんだから」
「メガネのくせに生意気アル」
そんな神楽の悪態にふうっとため息をつきつつ立ち上がって帰り支度を始めようと、手にした湯のみを台所に置きに行った。
神楽が後ろ姿をじっとみつめていると、銀時がニヤッと笑って言った。
「悪い連中とつき合ってんじゃネエのか?」
銀時がもらしたその言葉に神楽がポンと手を叩いた。
「そうネ!悪い連中にこき使われてるネ!やっぱりメガネはパシリが似合・・」
矢継ぎ早に放たれる神楽の言葉を途中で遮る様に新八が台所から戻ってきた。
「はいはい、悪い連中ですよ。もういいでしょ、明日で終わりだから」
新八はもう帰り支度をしていた。神楽の頭をなでると、すぐに玄関に向かった。
「じゃあ、ご飯の仕度はできてるから適当にどうぞ」
半ば投げやりに答えると新八は振り返りもせずにそのまま出て行った。
「銀ちゃん・・・」
神楽が深刻そうな顔で銀時に向かう。銀時はああん?と気のない返事をしただけだった。
「新八をパシリにしていいのはアタイ達だけネ。新八を助けにいくアル」
神楽の言葉にはいはい、と軽く流したが、銀時は少し頭を掻いてぽつりと言った。
「まあ、あれだ。明日それとなく見に行くか」
「銀ちゃん新八がどこに居るか知ってるカ?」
銀時はにやっと笑ってその問いかけには返事をしなかった。

「おはようござい・・・・」
そう言いかけて新八は目をみはった。真選組の門の中に作業着を来た銀時と神楽を見かけたからだ。
「おはようございまーす」
二人が声を合わせた。
「あんた達!何やってるの?!」
新八が大声で叫ぶと屯所の中から土方が出てきた。
「何だお前ら」
銀時と神楽を見て土方の声のトーンが一つ上がった。
「うちの従業員の仕事ぶりを見にきてやったんだ。ただ働きさせやがって」
銀時が土方に向かって言うと、チッと言う音が土方の口から漏れた。
「おめえ、知ってたのかよ」
そんな土方の言葉を無視する。
「あー、今日は最後だと聞いたので、二等兵の手伝いにきましたぁー」
神楽が直立不動で大声を張り上げると屯所の奥から沖田がぬっと出てきた。
「朝から胸くそ悪りい声が聞こえるぜ」
と言う声とともに沖田が神楽に向かって飛び蹴りをくらわせりる。
「うるさいネ!うちの新八パシリにしてるのはお前らか!!」
そう言って沖田の蹴りを受けると神楽も反撃に出た。
「パシリじゃねえ、小間使いでい」
「どっちでも良いアル!新八をこき使っていいのはアタイらだけだ!」
蹴りと手刀の応酬をやれやれという感じでながめていた銀時と土方を押しのけて新八が二人の間に割って入った。
「どっちのパシリでもねえよ!」
そう言ってタイミングよく神楽の襟首をつかんで沖田から引き離した。はあはあ言っている神楽の頭をポンポンと叩いて新八がなだめる。
「土方さんとの賭けで負けたんだよ。だからいいの」
神楽が新八にむっとした顔で振り向いたが何も言わなかった。沖田はそんな二人の様子を無表情でじっと見ていた。
「そういう事なら従業員の負けは、社長として責任を取らなきゃいけないなぁ」
銀時が土方に向かってにやっと笑った。
「俺たちがばっちりと手伝うぜ」
「手伝うネーーー!」
二人のいやらしい笑い顔を見て新八が頭を抱えた。
「手伝わないで下さい。頼みますから。そんな事したら一生ただ働きですよ」

しかし予想に反して二人はおとなしく庭の草むしりをしていた。新八は色々な所に呼ばれ、あちらこちらをウロウロして二人の仕事の様子を見る事が出来なかったが、台所にいてジャガイモを剥きながら山崎と話している姿を見てほっとしていた。
部屋に呼ばれていく途中の廊下から庭を見ると雑草が奇麗に抜かれていたのをみて胸を撫で下ろしながら歩いていった。ここ数日きれいに咲いていた花壇の花が一本もなかった事は見なかった事にして。

「今日で終わりですね」
隊長の集まる部屋に呼ばれた新八は土方の座るタバコが山盛りになった灰皿と書類の乗った机の前にキチンと立っていた。おまけの二人は近くの椅子にこれ以上ないという位横柄な態度で座っている。神楽は沖田の机に陣取り、主がいないのを良い事に机の上に何やら書き込んでいた。
「ああ、ご苦労だった。今日この後は?」
「山ほど仕事がありますので速攻で帰ります」
間髪入れずに帰って来た言葉に土方が笑う。
「まあ、もうあんな賭けはしねえから、つき合え」
銀時が新八の後ろからぬっと顔を出した。
「賭けなら今度は俺がうけるぜ。お前には負ける気がしねえからな」
耳元で突然聞こえた銀時の声に新八がひゃっと声を上げた。
「もう!銀さんびっくりするじゃないですか!ダメですよ!あんたの運のなさは日頃のパチンコで立証済みでしょうが!」
「うるせえなあ、大丈夫だって。ほらあいつなんか運なさそうだろ?」
銀時は相変わらずの死んだような目で土方をちらっと盗み見て新八の耳元でささやいた。
「銀さんよりは女神様に愛されてる様に見えますよ」
二人のやり取りをあきれながら見ている土方が二人の会話に割って入る。
「宴席を用意した。余計なのが増えたのは不本意だが、まあ食って帰れ」
食って、という言葉に一番反応したのは神楽だった。
「食い放題ネ!!!!!ひゃっほー!」
沖田の机の上に立ち上がり飛び跳ねて書類をまき散らしながら新八の背中に飛びついた。
「ぎゃっ!神楽ちゃん!ぐるぎい!!」
そんな新八の言葉をまるっきり無視して引きずる様に部屋を出ようとした時に沖田が入って来た。神楽の動きが止まったが、今度は新八が神楽を引き止める様に腕をつかんだ。
作品名:鬼の恋 作家名:きくちしげか