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きくちしげか
きくちしげか
novelistID. 8592
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鬼の恋

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光正はそう言ってあわてて屯所の中へと入って行った。
それを見届けて帰ろうとする新八の後ろに素早く沖田が立った。
「ああ、新八さんじゃネエですか。今日は何しに?また小間使いですかい」
その物の言い方に新八は唇を軽くへの字に曲げた。
「昨日のお礼に来ただけです。ありがとうございました。失礼します」
軽くお辞儀をして早口で答え新八が門をくぐろうとした時、沖田がその腕をつかんだ。
「せっかくだから、見廻りにつき合いませんかぃ」
そう言うと手にぎゅっと力を入れる。
「いっ、お仕事の邪魔になりますから」
とは言ったが沖田は腕を離さなかった。
「まあ、せっかく真選組の隊士気分を味わえるんだ、遠慮するなって」
さらに手に力をくわえる。
「別に僕は真選組に入りたい訳じゃありませんよ」
そう言って腕をひねったが、逆手に取られますます力が加えられていった。
「親切で言ってやってんだ。ありがたく受け取っとけよ」
体を新八に預け沖田が新八を組みしく様な形になっていた。
「痛てっ。分かりましたよ!行けば良いんでしょ」
「おまたせしまし・・・」
と言いかけた光正が二人の様子に慌てて駆け寄って来た。
「新八君何かしたの?!」
聞かされた台詞に新八が苦笑する。
「何かされてるのは僕の方なんだけどね」

しぶしぶ見廻りにつき合う事になった新八は光正と並んで沖田の後ろを歩く。言葉は少なく間にはあまり良くない空気が流れる。光正は小声で新八に声をかけた。
「沖田さん、何か機嫌悪そうですね」
その言葉にははっと渇いた笑いがもれる。
「何でだろうね」
「新八さん何かやったんですか?」
「さあ」
流石の新八も沖田の不機嫌の理由は何となく察していた。まぐれとはいえ2回も対峙してどちらも自分がきれいに負けなかったからだと。
(S王子には僕みたいな雑魚をこてんぱんに出来なかったのが気に入らないんだろ)
連日の沖田の行動にすっかり嫌気がさした新八はつい口を尖らせた。
街は日常と変わらず、日中の熱さも手伝ってどこかゆるい空気が流れていた。見廻りは大して面白くもなく、真選組の隊服を見た街の人間は無視するか遠巻きにみつめるだけだった。沖田は見た目は良いがその行動から声をかけて来る町人は滅多にいない。ただ、遠巻きに若い女の子達が時々携帯を向けるのが分かった。
「光正君、一番隊には入れそうなの?」
会話に困った新八がふと先日の会話を思い出す。
「う、いや、うーん」
「そいつは三番隊だ」
沖田がその会話を聞き逃すはずもなく、鋭い声で会話に割って入った。
「はい、ええ、先日欠員が出たので」
「あ、あの方の」
「一番隊なんて入れる訳ねえだろ。弱ええのに」
その言葉に光正が苦笑して下を向いた。
「ごめん」
新八は沖田の言い方を咎めることより、自分がその事に触れてしまった事に思わず謝ってしまった。
「いや、本当の事だから。今回の三番隊の抜擢だって、まぐれだったんだから」
光正はへへっと笑って新八を見た。新八が何か言いかけた時、ぶわっと空気が変わり騒ぎが聞こえた。
「ちょ、あ!良い所にいたよ!お巡りさん、ちょっと助けてやってよ!」
沖田と光正が素早く走り始めるとその後を新八が慌ててついていった。
野次馬が輪を作って遠巻きに見ている中心には肌の色が地球人とは違う大男が3人程何かを囲む様に立っていた。
「やめなさいって言ってるでしょ。嫌がってるじゃないの」
大男の向こう側から若い女の声がした。沖田と光正が野次馬を割って男達に近づいた。
「へーいもめ事はその辺にしとかないと、俺の仕事が増えるだろぃ」
人を食ったような物言いに大男が沖田の方を振り返った。
「うるせえな、何にもしてねえよ。この女が俺を誘ったから・・・」
「そんな!」
声は先程聞こえた女の声とは違って震えていたが、それでも精一杯出した切羽詰まったものだった。
「嫌がってたでしょ。それくらい察しなさいよ」
先程の若い女の声とは違う冷静な女性の声が新八の耳に届くと、どこかで聞いた声にそわそわし始めた。
「うるせえ!さっきから!おめえは黙ってろ!」
大男のまわりの空気がぐわっと動いたかと思うと「きゃっ!」という甲高い悲鳴が聞こえた。
沖田が動いた瞬間、ぐえっという今度は低い男のうめき声が響いて刀に手を当てた沖田の横に男が飛んできた。
沖田が動きを止め様子を見ると、新八が大声で叫んだ。
「姉上!何してるんですか!」
男が一人いなくなると、囲まれていた間からお妙の姿が現れた。
飛ばされた男の様子を見て口を開ける大男の間からにっこりと笑ったお妙が立っていた。
「あら、新ちゃん」
後ろの方に若い女の子が顔を半分覗かせていた。
「女の子を殴るなんて許せないわよね」
涼しい顔で言うお妙に大男がハッと我に帰り、動き出した。
「てめえ、女だと思って手加減してれば」
ザッ
黒い固まりが動いたかと思うと、大男が二人とも動きを止めた。
ドサッ
「うるせえからちょっと寝てな」
沖田の動きはよく分からなかったが、刀を抜いて立っていた事と、大男から血が出ていなかった事からどこかに刀の峰を当てたらしい事が分かった。
光正がその姿を見てほうっと声を上げた。
「やっぱり沖田さんは強いなあ」
しかし新八はそんな光正の様子には目もくれずお妙に駆け寄った。
「姉上!大丈夫ですか?まったくこんな危ない事を」
おろおろしながら心配をする新八にお妙の表情はそれほど変わっていなかった。
後ろに立っている女の子に振り返ってにっこりと笑った。
「大丈夫?」
その笑顔に安心したのか女の子がくたっと座り込んでしまった。
気絶している大男に声をかけていた沖田が立ち上がって二人の前に進み出た。
「大丈夫ですか志村さん」
沖田の立ち振る舞いは優雅で、後ろで座り込んでいた女の子は沖田の方を見て少し赤い顔をしていた。
しかしお妙はどこかしらっとした態度で接する。
「ええ大丈夫です。そうそう、先日は弟がお世話になって・・・」
「いいえ、俺は何にもお世話されてませんがねぇ」
その会話に割って入る様に新八がお妙の手を取ってぐっと引いた。
「姉上、そんな事今は良いから、怪我とかしてませんか?」
顔を青くしてお妙の手を取っている新八を見て沖田が鼻で笑った。
「大丈夫よ」
その顔を見てほっとした顔をした新八が「平気?」と声をかけながら、後ろの座っていた女の子の肩に手を置いて気遣うように立ち上がらせた。
「お姉さんの方が男だったら良かったのにねえ」
にやっとしながら沖田が新八に向かって言うと新八は顔を赤くした。その様子にお妙がぐっと沖田に詰め寄る。
「新ちゃんはねえ、立派な男の子よ。あなたにどうこう言われる筋合いはないわ」
沖田とお妙の会話を聞いてうつむいた新八の手をお妙が取って歩き始めた。
「さあ、行きましょう」
お妙はまだ倒れている大男の脇を通り、颯爽と野次馬の間を新八と女の子を従えて歩いていった。
「ふん」
沖田は面白くなさそうに光正に向かってあごをしゃくった。
「後適当にやっとけ」
おろおろする光正を尻目に沖田は携帯でどこかに連絡をすると、その場を離れた。
作品名:鬼の恋 作家名:きくちしげか