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加賀屋 藍(※撤退予定)
加賀屋 藍(※撤退予定)
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素直じゃない貴方の隣

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それから数ヶ月後。
俺は同盟ファミリーとの会談のために車中で、骸は護衛として広いシートのやや離れた隣に座っていた。革張りのシートは座り心地がよく、俺のためにはもったいないくらいだ。
「なぁ、骸」
「何ですか?」
無駄話なら付き合いませんよ、と骸は常のように素っ気ない。
運転席は空間的に分かれていて、こちらの会話は聞こえていない。だからこそ、“できる話”もあるということだ。

「お前が欲しい」
「……は?」

骸は驚いていた。珍しい間の抜けた表情を見て、俺は笑ってしまいそうになった。実際は、そんな余裕などなかったけれど。
「お前が欲しい、って言った」
「……何を馬鹿なことを。僕にとって、君はただの標的ですよ」
思わず驚いてしまったことを誤魔化すように、骸は早口に言った。
だが、俺は誤魔化されてやるわけにいかなかった。
「そうだけど、そうじゃないだろ。もしそうなら、お前は既に俺の体を手に入れてるはずだ」
「自惚れないで下さい。ただ期を待っているだけです。君の体を奪う最良の時を」
「それにしたって時間を掛けすぎてる。もう何年一緒にいるんだ」
骸は押し黙った。反応に困ったというよりは、俺を観察して、俺が何を言い出したのか見分している風であった。
『欲しい』。それがどんな意味で、どんな形で、とは問われない。
それで数ヶ月考え抜いた綱吉としては是非聞いてほしいところであっても。
骸は聡く鋭いから、聞かされる必要もないのだろう。だからこんな的確に、俺の弱みを突いてくる。
「……何故です?僕以外なら君を必要とし、愛を囁く者もいくらでもいるというのに」
「それは俺も思った」
骸は体と立場以外に綱吉を全く必要としていないし、愛を囁くこともない。俺が求めていることと真逆だ。
当然だろう。彼はマフィアをそりゃあもう憎んでいて、俺はその代表たるボスだ。
「それでも他の誰でも駄目なんだ」
「趣味が悪いですね、ボンゴレ」
「お前のことだろ?」
「元は敵対していた人間、今も体を狙われてて、しかも男ですよ?
僕には君に好かれるような覚えは何もないんですが……もしかして虐められるのがお好き、とかですか?」
確かに僕は虐めるのが好きな方ですが、と要らぬことを付け加える。
だが、そこに反応して話を逸らす手にも乗るわけにいかない。
「残念ながら違う。お前じゃなきゃダメだと思ったんだ」
俺が言い切ると、骸は無駄と俺の本気を悟ったらしい。
溜息の代わりに、鋭い一瞥をくれた。
「それでは、素直に申し上げましょうか。
……マフィアのボスの愛人になるなど、虫酸が走る。僕は君のものになどなりません」
本気の拒絶を感じ取って、俺はつい目を細めた。
大丈夫、溢れてくるものはない。
だって予想済みのことだ。俺はむしろ、にこやかに笑いかけた。
「うん。そう言うと思った」
「……呆気ない言い方ですね。少しは傷ついてみせたらどうです?愛着がわくかもしれませんよ」
嘘だ。そんなこと、こいつに限って絶対ない。
獲物が傷ついていたら、喜んで塩を擦り込むタイプだ。我が身で実証済み。
だが、俺はこんなに造作もなく嘘をつけない。強がっても簡単にバレてしまうだろう。
「あは。予想はしてたけど、実はこれでも結構傷ついてるよ。
でも、お前には悪いけど……諦める気、ないんだ。リボーンのおかげで諦めは悪くなったからな」
「『僕に悪い』ですか。本当に思っているのなら止めるのが普通ですが……君に常識を説いても無駄ですね。
どうぞお好きに。君が我を通すように、僕も己を通すだけです」
素っ気無く言い捨てて、骸は視線を窓の外へと移す。もう話すことは無いという意思表示だ。
それから目的地に着くまでの間、骸は何一つ俺の言うことに反応を返すことはなかった。


そう。間違いなく最初、そんな風に骸は余裕だった。
綱吉のことなど気にも留めていない様子で、しかし確実に向けられる言葉の毒はキツさを増していた。
綱吉が何度、息の根を止められそうになったか知れない。
だが、そんな関係がしばらく続いたある日。





骸が、キレた。