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加賀屋 藍(※撤退予定)
加賀屋 藍(※撤退予定)
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素直じゃない貴方の隣

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「……おかしいと思いませんか?」
骸がそう切り出したのは、俺が百数回目の情を乞って、いつも通り物凄い嫌そうな顔で骸が聞き流し、二人の会話が完全に途切れてしばらく経ってからだった。
その間、(もう慣れてしまった)刺さるような沈黙の中でじっと仕事をしていた俺は、いきなりの話が何のことなのか、さっぱりわからなかった。
「何が?」
だが、骸の深刻というより鬱屈した声に俺は手を止め、PCから顔を上げた。
骸の今日の任務は執務室の俺の護衛。先程まで入れ替わり立ち替わり人が出入りしていたのだが、今は落ち着いていて、お蔭で骸と二人きりだ。嬉しいやら、怖いやら。
見れば、骸の「美しい」と称される顔がひくりと動き、苛立ちが走っていた。
「『何が?』も何も、この現状がです!何で僕が追い回されなくちゃいけないんですか!?」
「だから俺は諦め悪くなったから、仕方ないって」
「君は本来、僕に狙われてた方でしょう!」
「だよなぁ。いつの間に逆転したんだろ」
あっけらかんと認めると、骸はキッと目を吊り上げた。背後に醸し出されるのは凍えるほどの殺気。

六道巡ってきた人は本物を見ているせいか、俺に地獄を見せるのが本当に上手い。
この10年、様々な事態に直面してきた俺が、つい逃げたくなるほどとはさすがだ。
……誉めてはいないが。

(それにしても……)
無意識に視線が骸に吸い寄せられる。怖いのに、見てしまう。
この城のどこか時代錯誤の感もあるクラシカルな内装に、骸の細身な長身と目鼻の通った顔立ちはよく似合い、この部屋の主がどちらかを考えてしまいそうになる。
部屋に注ぐ日の光も、艶のある長い髪の一本一本を照らし出していて、執務机から見る世界は彼のための舞台のように美しい。突き刺さる怒気さえなければ、いつまでもこうしていたいほどだ。
……実は面食いなのかもしれない、と思うのはこんな風に骸をじっと見つめてしまう時だった。
しかし、これも会話から意識を逸らしていたことになるだろう。
綱吉の気がそぞろだと感じた骸の口調は更にキツいものになった。
「ひ弱な君が僕をものにしようなど、1000年早い!」
「100年ですらないのかよ」
「当たり前です!僕がどれ程の時間をかけて六道を巡ってると思うんですか?君は100年くらいじゃ到底足りませんよ!!」
「はぁ」
経験者がそう言うならそうなのだろう。頷くと、骸はもっともらしく咳払いを一つした。
「話が逸れました。……ですから、やはり」
骸は言った。人が確信があることを告げる時の、きっぱりとした態度で。


「君が僕のものになるべきです」


「そうか。…………ええぇぇっ!?」
勢いに負けて思わず頷いて、遅れて内容を理解する。
「何ですか?嫌だとでも?」
骸は嫌がられるなどあり得ないと偉そうに腕を組んだ。
そりゃ確かに嫌なわけがないけど!
だってこれはあれだ。
以前言われた俺の地位と能力目当てでない、俺が乞い続けた意味の方だ。
あれだけ嫌がっていた……「愛を囁く人間」。そう、そういう意味の方!
乏しい文脈理解能力の代わりに超直感が告げている。
しかし、何故!?
「いや、だってお前……恋人なんかゴメンっだって!」
「はっ、『恋人』?……なって差し上げようじゃないですか。君に付き纏われるよりその方がまだマシです!」
鼻で笑った後、妙に据わった目で恋人付き合いを肯定されたが、『さぁ付き合いましょう』という雰囲気ではない。『さぁ殺し合いましょう』の方がまだ近い。何で三叉槍を手に持っていないのかが不思議になるくらいだ。
大体、好きと言われるより、付き合う方がマシってどういう理屈だ。
ぐるぐると考えた結果、俺は一つの結論に達した。

(……どうしよう、骸がイってる)

俺はそんなにマズい追い詰め方をしただろうか。思わず自問するが、大したことはしてない。
ただあの日から好きだと言い続けただけだ。
「で、どうするんですか、沢田綱吉。僕のものになるのかどうか」
骸が綱吉に答えを迫る。
(この人、こんなに気が短かったっけっ!?)
しかし、骸がおかしくなっているのを悟っていても、俺に「NO」という返事はできなかった。

「よ、よろしくお願いします……」

だって、今を逃したら、それこそ俺は1000年待たなくてはならない気がした。

とにもかくにも。
こうして俺たちは晴れて、「恋人同士(?)」になったのだった。