RE27こねた<01>
匣の穴に炎を注ぐと、たちまち匣が輝き、中から小さな生き物が飛び出してきた。オレンジ色の炎をたてがみのようにして纏う仔猫くらいのサイズの生き物だ。一度ディーノに見せたとき、おそらく天空ライオンシリーズだろうと教わった。
仔ライオンはテーブルの上に降り立つと、大きな欠伸をひとつこぼす。そして猫のように背筋を伸ばすと、自分の主人にトコトコと歩み寄った。
「ガオ」
甘えるように一鳴きして、綱吉の腕に頭を擦りつける。燃え盛るたてがみの炎は、見た目に反して熱さを感じさせない。
「ガオ、ガオ」
何故だか必死に甘えてくる仔ライオンを、綱吉は戸惑いながら見下ろす。
「おまえ、どうかしたの?」
「てめえが辛気くせえ顔をしてるからじゃねえか」
仔ライオンを除いて、部屋には自分だけだと思っていた綱吉は、突然の声の闖入に飛び上がった。慌てて振り返ると、食堂の入口に黒尽くめの赤ん坊が立っている。
「リボーン!」
「ダメツナが。まだメシを食い終わってねえのか」
咎めるように言って、リボーンが赤ん坊とは思えない跳躍力で、テーブルの上に飛び乗った。仔ライオンはきょとんとして、動きを止める。
「京子やハルが作ったメシが冷めちまうじゃねえか。さっさと食いやがれ」
「わ、わかったよぉ」
怖い先生に睨まれ、綱吉は慌てて箸を持ち直した。
そうして、もそもそとご飯を咀嚼し始めた主人を見て、仔ライオンは相手にしてもらえなさそうだと判断したらしい。くるりと身体の向きを変え、テーブルの上で仁王立ちしている偉そうな赤ん坊へと近づいていく。
「あ、ちょっとまっ……」
「ガオッ」
動きに気づいた綱吉の制止も間に合わず、仔ライオンはリボーンのすぐ前で行儀よく座り込んだ。目の前の、底の見えない漆黒の目をジッと見つめて、不思議そうに首を傾げる。
「ガオ?」
「なんだ、オレに用事か?」
「ガオッ!」
リボーンが不敵に笑うと、仔ライオンは嬉しそうに尻尾を立て、ペロリとその舌でリボーンの弾力ある頬を舐めた。
作品名:RE27こねた<01> 作家名:てんこ