RE27こねた<1.5>
――ツナは不思議な夢を見ました。
ぱちりと目を覚ますと、辺り一面がキラキラと輝いていたのです。びっくりして、よくよく目を凝らすと、キラキラしているのは空の上にあるはずの星のカケラたちではありませんか。どうしてこんなところに星が輝くのでしょうか。もしかして、空が落っこちてしまったのでしょうか。そうだとしたら、とてもおそろしいことです。
「いいや、空は落ちたりしないぞ」
不安でドキドキしているツナに、知らない声が降り注ぎました。男の人の低い声です。けれど、ツナのお父さんよりもずっと澄んだ甘やかな声で、ちょっとやそっとじゃ忘れられそうもありません。
「じゃあ、どうしてこんなに星がいっぱいなの?」
声の主を探して、ツナはキョロキョロと辺りを見回しました。おかしなことに、だだっ広い星の海の中、ツナの他には誰もいないのです。だけど、どこからともなく声は答えます。
「そりゃあ、お前が空の中にいるからさ」
「空の中に?」
「そうさ。空は落ちないが、お前が空に上がることはあるのさ」
ツナはこわくなりました。
「人がお空に上がる時は、死んじゃったときって、お母さんが言ってたよ。ぼく、死んじゃったの?」
たちまち溢れ出した涙で、ツナの顔はびっしょりと濡れてしまいます。塩辛い水滴は顔を濡らすだけじゃ飽き足らず、次から次へと星の上へと落ちていきました。
「お前が死ぬわけねえぞ」
声はきっぱりと言いました。
「だけど、ぼくは空の上にいるんでしょ?」
「ああ、そうだぞ。でも、お前は死んじゃいねえ。まったく、お前は泣き虫のようだな」
「だって……」
呆れ返ったように言われて、ツナはびしょびしょに濡れた手を恥ずかしそうに見下ろします。そんなツナを慰めるようにか、声はぶっきらぼうにも続けました。
「別に泣くなとは言わねえさ。今はまだそのときじゃねえからな。今のうちにどんどん泣いちまえ」
「そのときってなあに?」
ツナは首を傾げて聞きました。
「それはナイショだぞ。今日は顔を見に来ただけだからな」
「ぼくの顔を?」
「ああ。……お前がどんな奴か見たかった」
その言葉に、ツナはますます恥ずかしそうに頬を拭います。涙はようやく止まりましたが、まだ鼻がグスグス鳴っているのです。きっと、呆れさせてしまったでしょう。
作品名:RE27こねた<1.5> 作家名:てんこ