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ハイドロゲン
ハイドロゲン
novelistID. 3680
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レンリン詰め合わせ

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 「鏡音ってほんと可愛いよなー」
 「は?」
 思わず振り向いてしまったのは紛れもない自分の名字を呼ばれたからであって、だけれど言った当人とばちんと視線を交わした途端俺に向けられた言葉じゃない事に当然気付いた。否本気で俺に言われてても困るだけだけど。唯でさえ小さい頃はレン君てば女の子みたいねえとか言われ続けたきたものだから、軽いトラウマだったりする。なんて余談。
蝉の大合唱も終止符を飾ったつい先日。それでも未だこっそりとソロの歌い手は未だ自慢の歌声を馳せていて、猛暑を加速させている気がした。仰いだ空は雲一つない青天、学友達の愉しげな歓声が絶えない現在は体育の時間を使った球技大会中だ。俺が選択したバスケの出番は既に終わり、後は他の組の結果を待つだけで適当にクラスメイト達と固まって他の競技の観戦に回っている。今はサッカーを観戦中だ。
 そして、の話。わあ!とどいつかがシュートを放り込んだんだろう、更なる歓声が上がる横でそのさっきのセリフを言った奴(名前知んねー。多分隣のクラス)は一瞬こそきょとんとした対応を取ったものの、即座に快活に笑い飛ばした。嫌いじゃない笑い方。次いでに周囲の連中にも広がった様で、すぐさま俺の周囲には人の輪。談笑に燦然とした花が咲く。


 「ははっ、お前じゃねーし!」
 「そーそー!そりゃーレンは顔綺麗だけどさー!」
 「俺ら別にガチホモじゃねーよなー!」
 「当たり前だろ。ガチホモとかキメーこと言うなっつの!」

 軽く力を込めて身近の奴の頭を殴れってみれば又笑みが漏れて。こう云う風にクラス関係無くすぐに打ち解けれるのが野郎の良いとこだと思う。女の子はそうはいかないと見える。女の子特有の楽しさ?それも凄くあるんだろうけどさ、俺には時々理解し難い複雑な処世術が彼女達には存在している気がする。然しその和やかな流れに思わず口元は和やかに緩むのだけれど、…流れに身を任せとくのが一番楽しそうなのだけれど、ちょっと待て俺。ストップを掛けなければ、そうだよ俺。今こいつらは取り敢えずどこかにいらっしゃる「鏡音」さんを可愛いとおっしゃったんですよね?そして取り敢えず俺じゃないと否定している。ってことはこいつらの身近にいる俺以外の鏡音さんは一人しかいない訳で。
 自然と籠る眉間の力に、裏側かなり決死なのに飄々を装って隠しながら笑顔を浮かべて(案外愛想笑いは得意だ。伊達に此の14年間決死に培って来た訳ではない)。そいつらの面を激しくマーク……してたら何処からともなく女子特有の可憐な笑い声が振りかかって来た。…あ゛ー、なるほど。そういうこと、か。

 「あー可愛い。可愛い。近くに生リンちゃん!」
 「お前リンちゃんに惚れすぎ」
 「どーせ惚れすぎてますよー。でもお前らだってどーせ可愛いとか思ってんだろ?」
 「俺は巨乳派だからなー。メイコせんせーラブ」
 「俺の瞳には初音先輩しか映ってない」
 「てめえらは年上派なだけだろー?俺は同意!リンちゃん笑顔可愛いし」
 「レンが羨ましいよな。仲キモイくらい良いし」
 「確かに。キモイぐらい」
 「あれは流石に引く」
 「ハンパねえ」
 「でもそんなとこもリンちゃんだから許せる。つかレンだからまだ許せる」
 「…お前ら人のキョーダイをさっきっから…」
 「はあ?うるせー!お前はいつも近くにいっからわかんねんだよ!あの魅力が!」
 「くそ!こいつ!この贅沢者!」
 
 ……リンの魅力なんて誰よりわかってるっつの。俺を小突いてくるこいつらを呆れた視線で流しながらもやっぱり内心複雑ていうか、むかつく、のは仕方ないこと、だろ。キョーダイ。俺が形にした其の5文字が掌に爪先を食い込ませる。リンが男にも人気なのは前々から知っていたし、こういう状況に遭遇したのも初めてじゃないけれど毎回被るこの感情はぶっちゃけ勘弁して欲しい。比較的我慢強いって自負がある俺でも我慢するのにだって限界がある。キモイくらい仲が良いのは最早褒め言葉と受け取っているから俺は、其れに関しては逆に良い気もするけどさ。こいつらがここに 座った理由、さっきっからサッカーの応援に熱中してるリンが視界の片隅に映る。渦巻く胸中が痛い。


 「あれ、レンだ」
 


 それでもしょうがないだろ。我慢とかそろそろ効かなくなってきたていうか、つか今まで目の前で人のモノ惚気られても物凄いガン飛ばしながらも我慢してきたご褒美だと思って下さい、リンさん。寧ろ褒めろ。先程からの当て付けに無言で立ち上がり、彼女の元へ。咄嗟の出来事に開口している友人達も、リンの友達達も、疑問符浮かべているリンにも無視を決め込み、意味無く不審じゃない程度にでもさり気なく密着しながら至近距離で会話してやる。「今日一緒帰るんだろ」「え、うん。レンだって今日部活ないんでしょ?」。俺らにはこれだって日常通りの風景なんだよ、バーカ。ドン引きの様な、僻みの様な種々色々の視線を享受しながらも、俺を埋めるのは近くに感ずるリンへの愛しさばかりだ。ほら、ああやっぱり俺の双子の姉は世界一可愛いんです。なんかもう先程からの葛藤とか如何でも良くなってる俺が居て、末期だなと、心底笑えた。