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ひわひわのお話。

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「あんなにヒドい虫刺され、初めて見ましたよ。
 一体どんな環境にいたらあんな風になるんだか…。」

『えっ?!』

「む、虫…刺さ、れ………?」

「マジで………?」

「今までの振り…なんだったん………?」



あんずさんの言葉に一瞬耳を疑った。

俺自身を含め、全員が呆気に取られた顔をしていた。
涼しい顔をしているのは、あんずさんただ1人だ。

こっそりつつかれて、我に返る。
一緒になって驚いている場合じゃないことを思い出す。



「いやぁ、もう酷かったですよー。
 引っ掻いちゃったみたいであっちこっち傷になってるし。
 あれは絶対海に入ったら沁みますね。」

『・・・・・・』

「そうですよね、りせは?」

『えっ、あ、そ…そう!あっちこっち喰われちゃって!!
 今ボロッボロで酷くてさぁ!!』

「なんだ…キスマークじゃなかったのか……」

「【蓮】さん、何か言いました?」

「いや、何でもない。気にしなくていい。」

「そうですか?
 まぁ…そういうわけで、りせはは脱げないし海にも入れないんです。」

『そ、そういうことっ!!』

「本人は海には入れなくても普通に水着になりたかったらしいですが、
 もしご来店頂いてるお嬢様方に見られてしまって、
 憧れのホストのそんな姿を見て幻滅されてしまっては困るでしょう?
 だから、私が止めたんです。」

「あぁ、なるほどねー。」

「と言うか、何であんずさんそんなに詳しいんですか?」

「関東店で話が出た日、あまりにも反応が不自然だったんで
 聞いてみたら…って感じですかね。
 虫刺されが沁みて入れないなんてカッコ悪いから言えないって。」

『あ、あんずさん…!!』

「ふーん…なっさけない理由。」

『ウルサイっ!!』

「とりあえず、さすがあんずさん、気が利きますね!!
 オフでも店のことまで考えてくれるなんて…!」

「本当に。それに対して…これだからおこちゃまは…」

『だーれがおこちゃまだって…?』

「誰とは言ってないけど、反応したってことはお前なんじゃない?」

『っ…このコーラ野郎っ…!!!』



喧嘩腰になって向かって行こうとして、
一歩踏み出したところで大事なことに気付く。
振り返ると、あんずさんは嬉しそうに笑っていた。

驚きすぎて忘れていたお礼を言おうとして、
でもあんずさんは唇に指を当ててシーっと合図をする。



「いいから、行ってきてください」

『や、でも………うわっ!』

「へっ、ざまぁ!」

『オイこらamu!!待て!!!』

「若いって良いですねぇ…」



あんずさんと話していたところで、
どこからか取りだした水鉄砲でamuが水をかけて来た。
濡れても透けない素材の服にして正解だったと思いつつ、
とりあえず近場にあったビーチボールで応戦する。

真実(正しくは真実ではないけれど)がわかって興味が失せたのか、
気付くとみんなそれぞれ遊びだしていた。

オーナーは子供みたいに海に入って遊んでいて、
ジギルは完全に【蓮】さんとみーちゃんの玩具にされていた。









当たり前のような風景だけど、
ほんの少し前までは失うかもしれなかった風景。

女だとバレるんじゃないかと冷や冷やしたけれど、
あんずさんの機転のおかげで助かったことに、心底感謝した。




まだ、あの店にいられる。
まだ、あのメンバーといられる。

いつかいられなくなる日が来るまで。




――――もう少しだけ、ここに、いたい。




作品名:ひわひわのお話。 作家名:ユエ