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3.シュミエリ



シュミエリに問題です。「妹」「暗号」「絵文字」の3つの言葉を含め、7ツイート以内でショートショートを書きなさい。 http://shindanmaker.com/5279 ということで。


「何だこれは?」

怪訝そうに呟いて、しばらく紙片を透かしたり眺めたりし、やがて諦めて肩を竦めた。

「お手上げだ」

一体何の呪文だと、先程エーリッヒに手渡された紙片を突き出す。
流れるような字で書かれているのは『Hvufm Npshfo.』
何の意味もなさない記号の羅列でしかない。
しかし、 字間が設けてあること、ピリオドが打たれている最後から考えれば、何らかの言葉を表しているらしいという推測はできる。
が、しばし考えても思い当たるものがなかった。
謎かけかとも思ったから、簡単に降参を宣言するのは多少悔しくないこともないがまあ、他ならぬエーリッヒに対する場合には その「悔しさ」というのは稀にしか発動されない。
簡単に降参の意を示したことにか、それとも答えを示さなかったことにか、多少落胆したような表情を見せたが、それでもエーリッヒは笑った。

「ヒント、いりますか?」

「ヒント?」

「妹です」

「妹?」

それ以上はヒントも答えも示すつもりのないらしいエーリッヒは、ええ、と澄まして微笑んでいる。

(妹…?)

シュミットにも一人、エーリッヒにも一人、妹がいる。
そのどちらかを差すのだろうか。
…そういえばシュミットの妹は昔から家に訪ねてくるエーリッヒのことが大層気に入っていて、二人でいるとやたらと輪に入りたがったものだった。
二人で 過ごしたかった自分がそれを煙たがったのだがあいつときたら、とそこまで考えて、はたと思い出す。

(そうか、妹か)

昔、エーリッヒからシュミットに宛てられた手紙を、彼女はエーリッヒに対する好奇心から無断で読んでしまったことがあった。
当たり障りのない内容ではあったが、二人の間に他人に入られることに酷く苛立ちを覚えたシュミットは、エーリッヒにひとつ、提案をした。

「暗号を作らないか」

二人だけの、と。
二人だけで共有する何か、というのは、とても甘美な気がして。

「暗号?絵文字でも作るんですか?」

「いや、絵はかかない。アルファベットを一つずらして書く、重要な部分だけ。そうすれば他の人間には内容が分からない」

どうだ、いい考えだろう、得意げに顎を上げるとエーリッヒはきょとんとしてから、ふっと笑った。

「いいですね」

そうしてできあがったのが、これだ。
『Hvufs Npshfo.』
一つずらして、元の言葉に返せば、

「Guten Morgen.」

声に出して告げると、正解です、とエーリッヒが嬉しそうに笑った。

「じゃあ、俺からも問題だ。ちゃんと声に出して答えろよ?」

さらさらと紙に字を落とす。
覗き込んできたエーリッヒには、きっとすぐにわかるはずだ。

『jdi mjfcf ejdi.』



「さあ、なんだと思う?」





作品名:ツイッターお題より 作家名:ことかた