触れる魔法
そ、それって……。
俺のこと?
聞き返す言葉も出てこない。
「どうでもいいわけがない。俺はクラウドにはまってる……。クラウドが必要なんだ……」
ど、どうしよう……!
言葉が出ないよ!
何を言えばいいんだろう!
好きです、とかじゃ何だか軽すぎる気がするし……。
頭の中がぐちゃぐちゃだよ〜。
「だから、俺のいない間、気をつけてくれ……。他の奴のものになるようなことだけは……」
セフィロスさんは俺が見たこともない悲痛な表情をしてた。
俺はセフィロスさんと一緒にいるようになってから、セフィロスさんのものだと思ってたけど、セフィロスさんはそうは思ってなかったってこと?
「……あ、あの、俺……、もう、セフィロスさんのものだと……」
「……まだ、全部が俺のものになったわけではないからな……」
セフィロスさんは俺の頬から手を離して、その手をじっと眺めている。
「俺は……クラウドに触れるのが怖かった……」
「は?」
「触れてしまうと、クラウドを壊してしまいそうだったからな……」
俺を壊す……?
「俺は自分を抑えきる自信がなかった……」
俺は必死で頭を回転させた。
「……えーっと、あの、そういう理由でセフィロスさんは今まで俺に何も……」
セフィロスさんは軽く笑うと、まあ、そういうことだ、と言った。
「お前の全てを欲しがっていたのに、どうしても触れることはできなかった。辛い思いをするのはお前だとわかっていたしな。俺の思いだけを優先させることはできないだろう?」
セフィロスさんにものすごいこと言われてるのに、俺は、好きでいてくれたっていうことに安心して、気が抜けてしまった。
へたへたと床に座り込む。
「……よかった、どうでもよくなってるんじゃなくて……」
「だから、どうでもよくなどなっていない、と言ってるだろう。お前を傷つけて、お前を失うことになるのが怖かった……。単に臆病だっただけだ」
セフィロスさんは俺の横に屈んで、俺の頭を軽く叩いた。
「悪かったな。もっと早く、俺が行動に出ていればよかったか……」
俺は首を横に振った。
まさか、セフィロスさんがそんな思いでいたなんて思ってもいなかったし、セフィロスさんでさえも怖くなることがあるんだ、っていうことに驚いた。しかも、相手はこの俺だというんだから、気が遠くなりそうだ。
でも、セフィロスさんのその思いのせいで、出張の間、セフィロスさんは安心できないんだよなぁ……。
「俺は一週間、大丈夫ですよ。でも……」
「でも……?」
首を傾けているセフィロスさんに向かって、笑みを見せる。
「一週間離れるのは、寂しいです。全部セフィロスさんのものになってたらよかったのに……」
「……クラウド……」
セフィロスさんはくく…っと笑うと、いきなり俺をぎゅーっと抱きしめてきた。
こんなに至近距離にセフィロスさんがいる状況に、俺はどうしていいかわからなかった。