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刺青の聲〜タイトル未定〜

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「そろそろ真冬は女性と付き合ってみてもいいかもしれないね」
この男──麻生優雨──も嬉しげである。
じんわりと顔に笑みが滲んだ。
これもまた女性に表現したい言葉であるが、魔性の笑み、が。

満面な笑みを湛えた優雨の瞳に光が宿った。
その瞳は真っ直ぐに彼女を見据え言った。
「実はいい人を用意してあるんだ」
含みを持った声。

すかさず遮るK氏。
「おまえまさか……!」
「そのまさかだよ」
優雨の答えに生唾を飲み込みK氏は言った。
「……俺には?」
「さて真冬」
K氏には返答はなく。
真っ直ぐに雛咲真冬に向けられた言葉。
「どうかな? 彼女。ま、友達からでも……」
思いがけない優雨の言葉に雛咲真冬は動揺していた。
「いや僕は、そういうことは今は。妹もいることだし──」
「妹さんも真冬が早く身を固めてくれたほうが嬉しいさ」
優雨はいたずらっぽく彼女に話しかける。

いまだK氏は一人言葉を投げていた。
「おい、なんで俺にじゃないんだよ!」
「今日みんなを集めたの俺なのに。料理振舞ってるのも俺なのに。女も振舞えってか」
「そもそもそういう会だったのこれ?聞いてないよ俺」

口からはまだまだ不満が噴出しそうだった。
空隙を食物で塞ぐためK氏改め螢は料理を口に押し込んだ。

自分なりの精一杯の償いの気持ちをこめ用意した食膳であったが。
あれほど大量に並べたはずの食事は消え去ろうとしていた。

「そんなに細いのに意外と食べるよな」
思わずまた口から飛び出た。
この席で細いと形容できる人物は男女二名いる。
螢が指しているのは女性の方だった。

主賓の彼女は驚くべき食欲を見せていた。
それは作り手にとっては喜ばしいことである。
「俺の食事結構いけてるだろ?」
「山篭り中に野兎を狩って調理して鍛えた腕だものね」
若干毒のある優雨の言葉を螢はしっかり否定した。
「俺はハンターではあるかもしれないが狩人ではない」
「その違いは何なんですか?私にはよく──」
「どうでもいいことに頭脳を使う必要はないですよ雛咲さん。
天倉さんは兎も捌けるそうです」
「だから俺は兎は捌けると思うが狩りはしない」

男達の騒騒しいやりとりを彼女は黙って聞いていた。
胃袋を満たすのに夢中であったから。

少しふて腐れた螢が追加の料理を用意するため台所に立った頃。
来客を告げる音が天倉家に響き渡った。