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薄紫の空の彼方に貴方を見ました

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「あ、そうなんだ。…引き止めちゃって、ごめんね!」
「いえ、大丈夫です…、それじゃあまた今度!」
「…うん、またね、コトネちゃん。」

名前を呼んでもらえたことに、胸がずきりと音を立てたけれど、とにかく私は走り出していた。
隣には、私の様子を気にかけてくれるバクフーンがいる。
私は、心配そうに鳴くバクフーンに、気にしないでというように笑いかけるので精一杯だったから、
その後、そこに残されたタケシさんの言葉なんて、聞こえなかったんだ。


『思い出ができた』という言葉を聞いたとき、胸が張り裂けそうになった。
ぎゅうと胸が締め付けられるような、泣きたくなるような、叫びたくなるような。
どうしようもないことに追い詰められて、何も考えたくなくなる気持ち。
名前を付けることのできない衝動。

それに感情を支配されて口に出した言葉は、私の本心だ。

「思い出の中の人になんて…なりたくないんだもの……。」

外はちょうど夕暮れ時だった。
おつきみやまの向こうに沈む太陽をぼんやりと見つめながら歩く。
太陽は、もう自分の役目は終わったのに、まだまだ自分は働けるんだぞとでも言いたいかのように明るかった。
いつも頭上で輝いているほどの明るさではなかったけれど、まるで悪あがきのように照っていた。
夕日は、山も草も私も隣にいるバクフーンも、みんな平等に、包み込むように同じ色に染めていた。
そのオレンジの光は、まるで先程まで一緒にいた彼のようだと思った。
平等に、全てを、みんなを、人もポケモンも包み込むような温かさを持っていた。

だけど、太陽を愛してしまって、それにだけ愛されたいと思ったならば、どうすればいいの?
全てを平等に包み込んでくれる人に、私だけを見てなんて、言えるわけがない。

すでに太陽と反対側の空は暗くなってきていた。
紺碧とも漆黒ともつかないような色が迫ってきていた。
そうして、それらは太陽をも覆いつくしたいのか、それらと夕日の色が混ざって、薄い紫の雲をつくりだしていた。
まるで、全てを照らす夕日を、包み込んで一人占めしてしまいたいかのように。

「だったら…、あれは私だね。」

くすり、と、自嘲的な笑いがこみ上げる。
あぁ、早く元気になって、動きださなきゃ。
隣にいるこの子が、心配してしまうし、もっと強くなりたいし、戦いたい相手もいるし、