二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ささいな誤解とエトセトラ。

INDEX|2ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 


そう。
山本が、その恐るべき誤解にとりつかれたのは、一週間前のことだった。
母親が、若いころ着ていた服を仕立て直して、ハルやイーピンにプレゼントしよう、とおもいついたのがきっかけだ。
「あらーっ、サイズ、ツッ君にぴったりじゃないー」
奈々はプラスチックケースから出してきたパステルブルーのコットンブラウスをツナにあてがい、華やいだ声を出した。リビングの床一面に、洋服が広げられている。
「でも少し直さなきゃ、デザインがちょっと古臭いわね。ツッ君、悪いんだけど、着てモデルになってくれない? どこ直したらいいか、見てみたいから」
「えーっ、そんなの自分で着ろよーっ」
「まっ、いまさら無理よ、入らないわよ」
実際はさほど体型が変わっていなさそうな奈々だが、「現実を思い知るのはいやなものよ」と真剣に主張した。
「ねっ、お願い。母さんあんまりお裁縫上手じゃないから、実際に着てるとこ見てみないとわかんないのよ」
「だったら、ハルが来るまで待てばいいだろ」
「今日は予備校があるんですって。身長、一緒でしょ?」
「着てあげたらいいじゃない。ケチな男ね」
横で見ていたビアンキが述べた。リボーンも、明らかにどうでもよさそうに「減るもんじゃねーだろツナ」と言った。イーピンまでが自分に譲ってもらえる服だということで、ツナには通じない言語で熱心に頼み込んだ。
というわけで、気がつくとツナは奈々のお古を着せられていたのである。頭にはスカーフを巻いてくせ毛を抑え、ブルーのブラウス、ギャザーの入ったたっぷりしたスカート。少しレトロなフレンチテイスト、といったところだ。もともと奈々が着ていた服を、奈々似のツナが着るのだから、似合わないわけがない。
「いいわねーっ、母さん、娘がいたらこんなふうにお洋服の見立てしてあげたかったのよー」
「もういいだろ、脱いでも!?」
「そうね、ふふ、次はこっちを…」
「着ねー! 着ねーから!」
真っ青になって叫んだときだった。「チャイム鳴らしたんだけど誰も出ないからー」との声とともに、山本がひょっこりリビングをのぞきこんだのだ。
山本は、可愛らしいいでたちのツナに目をとめ、ぽかんとした。
しまった。ツナは真っ青になった。クラスメイトに見られたい現場ではない。
「あ、あの、これはっ……」
あわあわと言い訳しかけたときだ。山本が「にかっ」と笑って会釈したのだ。
「……あ、ツナの妹? はじめましてー」
「誰がだよ!」
黙っておけばいいものを、いつもの習慣でツッコんでしまうツナ。山本も山本だ。さんざん入り浸っておいて、どーしてそのような発想が出てくるのかが謎だ。
山本は目をしばたいた。声でわかったらしい。
「……ツナ?」
「わあああああー! 着替えてから説明するからー! 部屋で待ってて、頼むから!」
ツナはふんわりしたスカートにそぐわない外股でどたどたと山本に駆け寄り、ぽかんとしている友人を廊下に押し出してその鼻先でドアを閉めた。半ばパニックだ。頭のスカーフをむしりとりながら、先ほど脱ぎ捨てた自分のシャツとハーフパンツのもとへ走り戻る。
「もー、だから嫌だっつったのにー! どーしてくれんだよーっ」
「あらあら」
「変態だとおもわれたらどーしよーっ」
小花のかたちの透明なボタンをはずしながら、ツナは、半泣きの眼差しを自室の方角へ向けた。
ハブられ人生を歩んできたツナにとって、変態だと誤解されて嫌われる――というのは、かなり深刻で恐ろしい想像だった。せっかくの友達なのに。憧れの山本に、不気味そーに後ずさりなんかされたら、もう生きていけない。
めまぐるしく言い訳を探していたツナは、まだ気づいていなかった。
山本の天然は、ツナの想像を軽く超えていた、ということに。


おびえながらツナが部屋に入ったとき、山本はいつもどおりリラックスしたようすで、テーブルの前に座り、ツナの犬図鑑をぱらぱらめくっていた。
テーブル越し、かたくなって正座するツナに、さわやかな顔を向ける。
「悪かったなーツナ、いきなり入ってって。さすがにオレもびっくりしたけど、もう大丈夫だぜ」
なんと、言い訳するまでもなく解決していたのだろうか。さすが山本、とツナはホッとした。苦笑いして、
「……はは、そーだよね、びっくりするよね……」
「意外だったからなー。でもしょーがねーよな、人間誰にでも秘密があるもんな」
「……あの、山本、誤解しないで欲しいんだけど、趣味とかじゃないんだ。別に進んでやってたわけじゃなくて、母さんに頼まれて、仕方なく…」
「おばさんに? 親の仇とか、そういうのとらなきゃなのか?」
「……は……え?」
ここに至って、ツナはやっと気がついた。話が噛み合っていなかったらしい、と。
「ご、ごめん山本、カタキ? って? なんの話?」
「あ、突っ込んで聞いちゃ悪かったよな。でもツナ、どういう事情があっても、親友は親友だぜ!」
山本は、犬図鑑を閉じながら、力強く請合った。
「たとえ、ツナが、女の子だったとわかっても」