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ドッペルゲンガーのともだち【鉢雷現パロ】

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 相手はしばらく雷蔵を見つめて、ふわん、と笑った。そう形容するのが一番しっくりくるような、いかにも性格の良さそうな優しい笑いだった。さらりと彼の黒髪が揺れる。
「(この人、髪が綺麗だなあ。黒くてつやつや)」
「時間割、決まった?」
「あ、ああ、うん! あっ」
 先ほどまで自分のコンプレックスで一杯だった雷蔵は、ぶしつけに相手に見蕩れていた自分に気がつき、慌ててプリントをぐしゃりとつぶしてしまった。黒髪の男子は、あらー、とつぶやきながら、のんびりプリントの惨状を指でなぞった。
 なんだか、すごく、恥ずかしい。
「ぼ、僕、不破雷蔵」
 なんとも言えぬ間の後、雷蔵は、自分の名前を名乗った。
「俺は久々知兵助。よろしくな」
 幸い、粗相も唐突な挨拶も、相手は気にしていないらしい。やはりいい人だ。
「うん、よろしくね久々知君」
「兵助でいいよ」
「じゃあ僕も雷蔵でいいよ」
「うん。雷蔵!」
「なんだい兵助」
「へへー」
「へへー」
 高校初めての友だちになんだか照れてしまい、しばらくお互い頬を染めて笑うことしかできなかった。周囲はばっちりその様子を見ていて、この後三年間、二人には「ほわほわ組」という名が付きまとうことになるのだが、それはまた別の話。

 しばらくテレビやお笑いなどの他愛もない話を続けていると、思い出したように兵助が切り出した。
「そういや雷蔵って双子なんだよな。俺双子の友だち初めてでさ。後で紹介してよ。えっと、雷蔵は弟? 兄ちゃん?」
「へ?」
 その時雷蔵は、お腹の奥がきゅっ、とつかまれたような緊張を覚えた。
「もう一人は名前なんていうの? 雷蔵と関係ある名前なら、何か自然に関係する漢字が入ってる?」
「あ、あの」
 双子の名前も何も、雷蔵は一人っ子である。久々知はそれを聞いて、実際に数センチは飛び上がった。
「え、でも、A組にいるぞ!? おまえと同じ顔をした奴」
「え!? うそ!」
 驚きながらも雷蔵は納得する。それか! それでみんなが自分を見ていたのか?
 そこで彼は、冒頭のドッペルゲンガーを思い出したのだ。
 双子と間違えるほど似ている人物が、本当にいるのだろうか? しかも、この狭くも広い日本で、同じ学校にいるなんて……やはり雷蔵には信じられない。
 そう。大体、ドッペルゲンガーと会ったら死ぬかもしれないのに……。