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タカ丸さんの口から出た言葉は思いがけないもので、僕は少し拍子抜けした。
「思い出作り…ですか?」
「そう、思い出作り。」
思わず聞き返してしまった僕の言葉を、タカ丸さんはそっくりそのまま返してきた。忍術学園に思い出作りのために編入…?本人の口から聞いても、どうもその言葉にはピンとこない。
僕は視線で、タカ丸さんに続きを言うように促す。タカ丸さんは少し言葉を口にするのをためらった後、慎重に言葉を選んでいるのか、ゆっくりと続きを口にした。
「僕、小さい頃からずっと髪結いの修行してたでしょ?同年代の子と遊ぶ機会がほとんど無くって…。大勢でわきあいあいとしてる乱太郎たちが凄く輝いて見えたし、羨ましかった。だから、僕もこの学園に入れば、こんな風に友達に囲まれた充実した毎日がおくれるのかな…?なんて思っちゃったんだ。」


タカ丸さんの言葉は、おそらく発した本人の意図したものよりずっと、僕の胸に重く響いてきた。

思わず考え込んでしまった僕に、タカ丸さんは何を勘違いしたのか、「あ、でも今は、真剣に忍術学んでるし、将来は髪結いと忍者を両立できたら、なんて思ってるよ!」と、少々焦り気味に話しかけてきた。

違う。僕が考えていたのはそんなことじゃない。

タカ丸さんは、あんな膝の傷を負うくらい真剣に志していた髪結いの道をいったん捨ててまで、「思い出作り」のために忍術学園に入ってきたのか?
この人にとって「思い出作り」はそんなに重要なものなのか?


だが、それを本人にたずねることはできなかった。

何がどれくらい大切かなんて、そんなの人それぞれだ。タカ丸さんにとって、同年代の友達をつくり、彼らと触れ合うことは、髪結いの道をいったん捨ててでも手に入れたいほど魅力的なことだったのだろう。

そこで一つの考えが浮かぶ。

そこまでして「同年代との「思い出作り」」を渇望するなんて、タカ丸さんは、これまでどんな十五年間を過ごしてきたのだろうかと。

髪結いのような職人気質の職業は、それこそ物ごころついたときから修行をさせるという。ましてやタカ丸さんの父上は、有名なカリスマ髪結いだ。その修業が群を抜いて厳しいものであることも、想像に難しくない。
同年代の子が野原を駆け回っていた頃も、彼らのそんな姿を横目に、タカ丸さんは父上と二人、修行に励んでいたのだろう。

そんなことを考えると…
作品名:ステップ・アップ 作家名:knt