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クリスマス米英1

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「でも暖房効いてるからここに来てんだろ?」
「わかってるね、フランス!俺コーヒーよろしく」
「言われなくてもセーシェルが淹れにいってるよ」
そう言ってアメリカがずかずかと断りも無く入ってきて、書類を一枚差し出してくる。
よく見るとそれはアメリカのクラスではなくリトアニアのクラスで、どうやら途中で書類を持ってくる役目を引き受けたらしい。
きっとリトアニアが忙しそうな場面に出くわして、気軽に引き受けたに違いない。
見てなくてもそんな光景が容易に想像できて、内心で溜息をつく。
――俺にはそんな気遣い、一度たりともしてくれないくせに。
一度嫌われて俺の元から出ていった奴だから当然といえば当然だが、それでも好きな相手のそんな行動にちくちくと小さく胸を刺すものがある。
元弟なんかに惚れてしまったどうしようもない自分が悪いのもわかっているし、望みのない相手だともわかってる。
でも気付いたら好きになっていて、一度気付いてしまうとどうしようもなかった。
そして普段よほど嫌いな相手以外には気さくで、ヒーローを自称する奴らしく誰にだって結構優しい奴なのに、それが自分に適用されないのも知っている。そんな扱いには流石に慣れていても、それでも何も感じないわけじゃなかった。
学年が違うのだから姿なんて見えなくても当然なのに、クラス委員なんて役割をしてるせいで、嫌でもアメリカの姿が目に入る。
見る度にちくちくと刺さるトゲに、いっそ全然会わなくなったらいいのに――そう願っては、きっとそうなったらなったで耐えられないだろう自分を想像して嫌気がさした。
「今日のお茶請けはなんだい?」
「お前いつでもここに茶菓子があると思ってない?」
「あるんだろう?」
「…ま、あるけどさ。今日はカナダから貰ったマカロンだよ」
苦笑したようにフランスがカナダから貰ったというマカロンをテーブルの上に出す。
早速ぱくぱくと食べはじめたアメリカにつられるようにフランスもマカロンを口に運んで、アメリカを見て言った。
「お前、パーティの服用意したのか?」
「勿論してるよ。ああ、いっとくけどお説教はなしだよ。俺だってちゃんと正装さ」
「お前のことだからジャケットがいいとか言い始めるかと思ったよ」
フランスの言葉は俺の感想でもあって、書類に戻ろうとした手が止まる。
作品名:クリスマス米英1 作家名:叶 結月