クリスマス米英1
俺の方なんて見向きもせずに菓子を食ってるアメリカは、あっけらかんとしていった。
「まあジャケットの方が気楽でいいけど、クラス代表としてしっかり正装してくださいねって日本に念を押されたからね。…君たちも、出るんだろ?」
「出るさ。半分楽しみつつ半分は仕事だな」
なんとなく予測はついていたが、仲の良い日本の進言らしい。
アメリカはリトアニアや日本のいうことは素直に聞くし、彼らに対しても優しい。
…アメリカの趣味はわかりやす過ぎて、余計に自分など好みではないとわかるから気が重くなる。
わかってる。期待なんかしてないさ。
クリスマスパーティは正装で参加するのだから、当然のようにパートナーと一緒に出るものが大半だ。
モテるアメリカが一人で出るわけがない。
もし女子とでなく友達と行くのであっても、リトアニアや日本が誘われるに決まってる――自分など欠片も望みがないのに、アメリカを誘いたいだとか、予定を知りたいだとか、そんなことを考えてはドキドキしてしまう自分が馬鹿みたいだ。
一体何を期待するのか自分でもわからないのにしてしまう辺りが、恋の厄介なところでもある。
自覚があるのに改善しない症状に内心溜息をつきつつ、意識的にそんな自分の思考に蓋をする。
きっと俺がここで口をはさんでも最終的には喧嘩にしかならないことはわかっているから、せめて穏やかに過ごすために、口を閉ざして耳を澄ませて書類に向かう。
ただ同じ空間にいることが嬉しいだなんて末期だなと思いながら書類のサインにペンを走らせると、絶妙なタイミングでアメリカが発言した。
「ふうん。パートナーは決まってるのかい?」
ガリ、とペンが勢い余って変な方向にサインが歪む。
…ああこの書類は下手をすれば再提出をくらいそうだな。
そんなことを思いながら新しい書類に手を伸ばしてサインをしようとすると、再び会話が始まった。
「おにーさんがパートナーなしなんて、あるわけないだろ?」
「ああ、そりゃそうだよね」
「ていうかお前は?俺、どっちかっていうとそっちの方が興味あるなあ」
声だけでによによ笑っているフランスの様子がわかって、再びサインの文字が変な方向へと歪む。
あの髭、いらないこと聞きやがって。
なんでよりにもよって俺の前でアメリカの予定なんか聞くんだ。
どうせこいつは可愛いガールフレンドか日本やリトアニアと行くに決まってる。