鳥の歌
すると。
「そうか」
桂の視線が下方におちた。
「そうだな」
その声音は優しかった。
「……では、俺は帰るとしよう」
ああ、と返事しようとして、なぜだか口から言葉が出てこなかった。
しかし、桂は返事がないことを気にせず、立ちあがろうとする。
その瞬間、行くな、と強く思った。
頭はなにも考えず、ただその想いに突き動かされる。
驚いて動きを止めた桂をつかまえるのは簡単だった。
そのあとはさすがに抵抗したが、銀時のほうが力が強く、その力の差で押しきった。
「銀時!」
桂が非難するように名を呼んだ。
だが、それを無視して、畳に倒し、その上に覆い被さる。
顔を背けようとした桂の顎をしっかりとつかんで動けないようにして、口に自分のそれを押しつけた。やわらかな唇は硬く閉ざされているが、刺激を続けるうちにその力が弱まったのを感じ、すかさず舌をなかに入れる。歯列を舌でなでる。身体の下で桂が一瞬びくっと震えた。けれども、それより奥への侵入をゆるそうとはしなかった。
唇を解放すると、桂は険しい表情で銀時を見あげ、にらんだ。
「俺を放せ。確かに、望むことがあれば言えと言ったが、俺にできることであればとも言ったはずだ。これ以上は嫌だ。俺にはできない」
そう断言し、銀時から逃れようと動く。
けれど、即座に桂の身体を畳に押しつける。
「銀時!」
「……ほしいものはいつも手に入らねェ」
桂を拘束したまま、ふとそんな言葉が口から出ていた。
「そんなのわかってるから、最初からほしいと思わなきゃ手に入らなくても平気だから、なにかほしいなんざ思わないようにしてきた」
ただし食いもんだけは別だけどな、食わなきゃ死ぬから、と付け加えた。
そして、続ける。
「だけど、今度は手に入ったって思った。だから、俺でもなにかほしいって思ったり、だれかに言ったりしてもいいのかと思った」
脳裏に松陽の姿が浮かぶ。