短いのまとめ
臨帝、電車での話/
時間帯からして乗客がかなり過疎した電車に乗る。気に入った席に腰を落ち着けて顔を上げるとおや、と思う。池袋に住まう胡散臭い情報屋さんが通路を挟んで前方に座っている他に、この号車に乗客は居ない模様。
かのひとが此方を視認し、これまた胡散臭いという言葉を忠実に再現したような微笑を浮かべた。特に用事もないのでぺこりと会釈するに留め、下車までの時間を愚鈍にした感覚器官で咀嚼し始めた。
どうやら少しの間意識を擦れさせていたようで、時間の経過した分だけ窓越しの景色の主だった色に変化が訪れていた。
電車が駅内に潜り一時停車する。寝過ごしてはいないかと表示や腕時計を確かめていると、どうしたものか照明が瞬き陰る。乗車口が開閉して、乗り込んだ乗客が薄暗い中で蛍火のごとく仄かに光る。輪郭のあやふやなそれらは、そう、複数の乗車したもの達は座席に座らずに列を作って通路を移動してゆく。明滅を繰り返しつつきらめき賑わう雰囲気はパレードのそれで、浮いた心地が伝染しており、過ぎてゆくそれらを僅かに寂しく思いながら見送った。
溢れる光の欠片を点々と足跡のように落としながらも隣の号車に移動し終わり、光が宙に溶け切ってしまい瞳で映せず楽しめなくなった頃合いで、照明が潜めていた息を吹き返した。そして何事もなかったような顔をして、運転が車体を滑るように再開した。
ブラックアウトしていた意識が揺れ居眠りから覚醒すれば、臨也さんが隣席に居を移していて感想をぽつり口にする。
「よかったな」
「ええ、そうですね。静かで賑やかなパレードでした」
「違うよ、非日常に輝かすきみの目を見れたからだよ」
「…非日常を共有するのもいいものですね」
「こっちとしては妬けちゃうけどね」
そうのたまうと胡散臭く、それでいて惚れてしまっても仕方のない程までに至極美しくある微笑を、此方に華麗に寄越してみせた。
時間帯からして乗客がかなり過疎した電車に乗る。気に入った席に腰を落ち着けて顔を上げるとおや、と思う。池袋に住まう胡散臭い情報屋さんが通路を挟んで前方に座っている他に、この号車に乗客は居ない模様。
かのひとが此方を視認し、これまた胡散臭いという言葉を忠実に再現したような微笑を浮かべた。特に用事もないのでぺこりと会釈するに留め、下車までの時間を愚鈍にした感覚器官で咀嚼し始めた。
どうやら少しの間意識を擦れさせていたようで、時間の経過した分だけ窓越しの景色の主だった色に変化が訪れていた。
電車が駅内に潜り一時停車する。寝過ごしてはいないかと表示や腕時計を確かめていると、どうしたものか照明が瞬き陰る。乗車口が開閉して、乗り込んだ乗客が薄暗い中で蛍火のごとく仄かに光る。輪郭のあやふやなそれらは、そう、複数の乗車したもの達は座席に座らずに列を作って通路を移動してゆく。明滅を繰り返しつつきらめき賑わう雰囲気はパレードのそれで、浮いた心地が伝染しており、過ぎてゆくそれらを僅かに寂しく思いながら見送った。
溢れる光の欠片を点々と足跡のように落としながらも隣の号車に移動し終わり、光が宙に溶け切ってしまい瞳で映せず楽しめなくなった頃合いで、照明が潜めていた息を吹き返した。そして何事もなかったような顔をして、運転が車体を滑るように再開した。
ブラックアウトしていた意識が揺れ居眠りから覚醒すれば、臨也さんが隣席に居を移していて感想をぽつり口にする。
「よかったな」
「ええ、そうですね。静かで賑やかなパレードでした」
「違うよ、非日常に輝かすきみの目を見れたからだよ」
「…非日常を共有するのもいいものですね」
「こっちとしては妬けちゃうけどね」
そうのたまうと胡散臭く、それでいて惚れてしまっても仕方のない程までに至極美しくある微笑を、此方に華麗に寄越してみせた。