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短いのまとめ

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粟楠帝/
「す…っ、すみません…っ!!!」

それが今日からお嬢の家庭教師を務める筈の年若い大学生が青い顔をしつつ、幾時間かを迷子になった末に漸く辿り着いた第一声であった。

「いや、無事来られてよかったねえ。微妙に賑やかな処から離れてるし、おいちゃんは迎えを遣した方がいいと思っていたんだけど」
玄関先の問答に、角から様子を窺っていた小さな少女がそろりそろりと顔を出す。自分を取り囲む環境の輪から外れた、潔白の一般人に興味と平凡への少しの羨望が円らな瞳に滲んでいるようである。
可愛らしい視線に気が付き、強張っていた表情が更に眉を八の字になり、と少々頼りなさが、または優しげな気性が覗く。
「…ごめんね、遅くなってしまって。初めまして、今日から君の家庭教師になる竜ヶ峰帝人です。よろしく、…茜ちゃんって呼んでいいかな」
己の足にしがみ付きながらも小さな頭を縦に小さく振り、頷く少女にやっと安堵を見せた先生をお嬢の部屋に案内し、ではとよろしくしてドアを穏やかに閉めた。
待機を指示されている部屋に戻れば同じく備えていた、殆ど表情を動かさずに四木の旦那が言う。
「やれ、一般の者をと嬢が強く希望して初日からどうなるかと」
人は善さそうに見えたなと己の初見の感想を口にし、それに対し相手の伏せた鋭さの抜けない目で概ねの同意を得た。
「それじゃあ差し入れの準備をしてくるかな」
無言の首肯を受け取り、台所へ向かった。取り敢えず、あの心から申し訳なさそうにしての遠慮を再びされるであろうが、帰りの送りをしようと思いつつ。
作品名:短いのまとめ 作家名:じゃく