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鉛筆ロイと消しゴムエドワードの冒険

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「そうだね。すまなかった……私のこの手は、君と、エドワードとだけ繋ぐべきものなのにな…」
ひっくひっくと声を上げて泣くエドワードをロイはぎゅっと抱きしめ続けます。
「すまないね。エドワード。私のパートナーは君だけだから…もう他の人と手は繋がないから…」
だから泣きなんでくれないか?とロイはエドワードの頭をなでます。そのロイの掌が温かくてエドワードはますます泣きたくなってしまいました。

「ロイ……」
いつか、もしも。オレを全部使い切ってオレがケシカスになった後。
「うん?なんだいエドワード?」
いつか、もしも。そうなった後。他のパートナーなんか選ばないで。
そんなこと言えるわけはありません。間違えた字を直さずに書きとめたままでいたり、ぐちゃぐちゃな線を引いてごまかしたりなんてそれこそ最大級に恥ずかしいことなのですから。
だけど。
だけど使い切るまでは。それまでは。
エドワードは瞳に力を込めて、お腹の底から大きな声を出しました。
「ロイのパートナー…オレだけだからな!!」
だから、オレを使い切るまでは他の消しゴムを見ないで。次のパートナーなんか探さないで。まだまだずっと二人で手を繋がせていて。
エドワードが顔を上げれば傾きかけた夕方の太陽がそこに反射して、涙で濡れたエドワードの瞳をきらきらと輝かせます。綺麗な金色の光は、色鉛筆のお姉さんたちなんかよりももっとずっと美しい宝石のようでした。綺麗だな、とロイは心の底から想います。その涙の中にあるエドワードの悲しみなどロイにはもちろんわかりません。けれど。
「ああ、もちろん。私のパートナーは君だけだよエドワード」
これほどまでに綺麗なものは他にはないとロイは思うのです。だから、その想いのままにロイはエドワードをひょいと抱きあげました。手を繋ぐよりももっといいかなと、ちょっとだけ思ったのです。
「私はエドが大好きだからね。ずっと二人で冒険を続けよう」
ちょっとだけ、悲しくなりながら。エドワードはロイにしがみ付きます。
怖いのは、初めて訪れたあの薄暗い国を冒険することなどではないのです。
怖いこと。それはロイと離れること。エドワード以外の消しゴムをパートナーにしたロイを見ることなのです。
だから、この手を離したくない。ずっとずっとロイはオレのでいて欲しい。まだ、その別れの時は来ないでほしい。
だっこなんて赤ちゃんみたいだなと思ったけれど、抱きあげられた温かさを逃したくはなかったのです。強く強くしがみつきます。
いつか、この手が離れる時が来るかもしれない。だけどそれは今じゃない。今はこうやって、ぎゅってしがみついていられる。まだまだずっと手もつなげる。
これから先を考え出したエドワードはもしかしたら今日の冒険でちょっぴり大人になったのかもしれません。
けれど、それでも。いつか来る未来は心の片隅に追いやって、今はだた仲よく家に帰るのです。
「今日は疲れただろう?ペンケースの家でゆっくり休むとしようか」
ぽんぽんとあやすように背中を軽く叩かれて、エドワードはこくんと頷きました。
「うん、ロイ。……手、繋いで寝てくれよ?」
「ああもちろん。寝るときだけじゃないよ。今日も明日も明後日も。ずっとエドワードと手を繋がせてくれ」
うん。と、エドワードは頷きます。
今日も明日も明後日も、いつかきっと来る別れの日まで。オレはすっとロイの手を離さない。
そう、この時のエドワードはほんの少し悲しく考えながらも微笑んでみせたのです。

今日も二人は冒険へと出かけるつもりです。けれど何となくエドワードの元気がないようなのです。引き出しの国から帰ってきて、それから何やら少しずつ物思いにふけることがエドワードには多くなってきたようです。そんなエドワードをロイは心の底から心配していました。
「エドワード、疲れているのかい?今日は家でゆっくりと過ごそうか?」
心配そうにのぞきこんできたロイにエドワードはふるふると首を横に振ります。
「そんなことねえよ、オレ元気!!行こうぜロイ!!」
その声はしっかりとはしています。だけどロイにはその元気はカラ元気のようにしか思えません。ロイは伸ばされた手をしっかりと掴み、こう告げました。
「では今日は近所の冒険に行くとしよう」
「えー、近所じゃ冒険じゃねえだろ?」
エドワードは不満そうです。
「そんなことはないとも。家の裏の公園だって随分と行ってないではないか」
公園、と聞いてエドワードはぴくりと反応しました。そうだ確かにもうずいぶんと公園で遊んでいない。ロイと公園。それは心躍る提案でした。
「公園!!行きてぇなっ!!」
「よし。ではさっそく出掛けるとしよう」
今日の冒険はどうやら公園と決まったようです。二人はいつもどおりに手を繋いで出かけます。トコトコ歩いていくと、公園のベンチに座っていたシャーペンさんに出会いました。細い字も書けるスマートな奴、と評判の彼です。鉛筆からシャーペンに乗り換えた者はたくさんいます。
「やあ、小さくて可愛い消しゴム君。君もダサい鉛筆など捨てて、僕のパートナーにならないか?」
白い歯をきらりと光らせて、シャーペンさんはエドワードに手を差し出しました。どうやらシャーペンさんはこの公園でナンパをしているようなのです。エドワードは自分を「小さい」と言われたことにも、大好きなロイを「ダサい」呼ばわりしたことにも腹を立てました。 何よりエドワードはロイ以外の誰かと手を繋ぎたくなどないのです。
「へっ。パキパキパキパキすぐ折れちまうシンの弱いやつなんてオレは好きじゃねーんだよ」
べーっと舌を出されてもシャーペンさんは動じません。
「確かに僕の芯は細いからねすぐ折れる。だけど、鉛筆さんと違ってこの身が小さくなることはない。ずっと芯さえ補充すれば僕はなくならずに使い続けることができるんだよ」
だから鉛筆よりシャーペンに乗り換える奴が多いじゃないか、と自慢げにシャーペンはエドワードを説得します。ついでにコピー用紙君にも来てもらって、シャーペンの書き味を確かめさせます。
「ほら、こんなに細い線がずーーーーーっと書き続けられるんだよ。鉛筆はすぐ線が太くなるから使いにくいだろ?」
確かに書き比べをしてみてば一目瞭然です。コピー用紙さんの上に書かせてもらったロイの線は、いくら丁寧に書いても最初は細く、次第に太くなっています。そうして書きにくくなったら鉛筆削りさんの出番です。先を削ってもう一度書いて、太くなったらまた削っての繰り返しです。その点シャーペンさんなら、カチカチカチと頭をノックして芯を出せばいいだけです。芯がなくなれば…そうしたら替え芯を入れればいいだけです。なんて簡単なんでしょう。
ですがそんな誘いに乗るエドワードではありませんでした。エドワードは自分がケシカスになるまでロイと一緒に居たいと強く願っているのです。
「オレのパートナーはロイだけだ!!ロイは芯を使い捨てなんかしない。字だって一文字一文字ていねいに心をこめて書くやつなんだ!だから、オレはロイがいいんだ。ロイがオレのパートナーなんだからなっ」