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竜ヶ峰帝人の困惑

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正臣の「別れも視野に入れろよ」という声を背中に受けつつ家路につく。
臨也のマンション前まで来ると、当然のように真っ黒なコートを着込んだ男が立っていた。
にこにことまるでこの世の春を一身に背負ったかのような幸せなオーラが漂っている。
黒なのにピンクだ。

「おかえり帝人君。今日はどうだった?あぁそうだケーキを買ってきたよ。君が好きなのはショートケーキだよね、一応モンブランとかチョコのとか色々20個ぐらい買っちゃったから好きなだけ食べてね。あと紅茶も新しいのにしたんだ、これも種類があるから好きなの選んでよ。それで今日は嫌なことはなかったかい?ムカつく教師とかクラスメイトとか、いない?いる?でも大丈夫問題ないよ、君の嫌なことは俺がちゃんと消してあげるから、何かあったらすぐに言ってね。あ、宿題とかある?俺が教えてあげるから絶対に1人で部屋に籠ったりしたらダメだよ。俺と君の時間を邪魔するものなんて切り刻んじゃうからさぁ」

これが玄関を開けるまで片手を握られたまま続けられた。
言葉が続けば続くほど帝人の顔が憂鬱に彩られていく。
そんなことには一切気付かず、臨也は嬉しそうに楽しそうに1人きりの会話を続ける。
ガチャリと玄関を開けて、先に入った臨也がくるっと帝人を振り返る。

「おかえりなさい、帝人君」
「・・・ただいま、です」

はぁとため息をついた帝人をぎゅっと抱きしめて臨也は満悦に浸った。
すりすりと頬を帝人の頭に擦りつけ、至福の息を漏らす。
そのままいつものように洗面台からソファまでの一連の動作を終え、楽しそうに臨也は冷蔵庫からケーキを取り出し紅茶と一緒にテーブルへと置く。
箱ごと置かれたケーキを示しながら「どれにする?」と聞く臨也は本当に楽しそうだった。
もうオーラが違う。
そしてそのピンク色のオーラを見るたびに、自分の何かがすり減っている気が帝人はしているのだ。
なのでちょっとばかりこの状況を変えてみようと、冒険してみることにした。

「臨也さん、僕あした正臣のところに泊ま」
「駄目」

全部言いきることもできなかった。
臨也の顔が無表情になっている。
なんとなく負けてはいられない、と思った帝人は再度口を開く。

「明日出掛けて」
「駄目」

「セルティさんのとこに遊び」
「駄目」

「臨也さんの事務所で波江さんとお喋り」
「・・・・・・駄目」


最後だけは少しためらって臨也さんはそれでも首を横に振った。
おそらく、事務所に行く=○で、波江さんとお喋り=×、なんだろう。
臨也がまともな人間でないことはわかりきっていたけれど、この独占欲は異常ではないだろうか。
というよりそもそも帝人も案外我慢がきかない性格である。
1人で我慢してため込むタイプなら青葉の手なんて刺してない。
思考としては「駄目だこいつ早くなんとかしないと」状態だ。

「臨也さん、いい加減自重してください」
「ん、何が?」

ショートケーキをフォークで切り取って、はいあーんと帝人の口元へ持っていく臨也の顔は緩み切っていた。
波江からすればここまでできるようになったことをある意味喜ばしく思うだろうが、ここに波江はいない。
そのため帝人に対して臨也がどこまでヘタレで駄目な大人だったかを帝人は知る由もない。
独占欲の激しすぎる恋人なんて、最終的には刃傷沙汰になるものではないだろうか。

「その・・・盗撮とかしなくなったのは良かったです。いや、それが当たり前なんですけど、そのはずなんですけど。でもなんていうか・・・ケーキとかこんな20個も30個も買ってこられても困りますし、遊びにもいけないとか、いちいち今日の報告しなきゃいけないとか、そういうの本当に重いんですけけど」

言いながら帝人の目はどんどん淀んでいっている。
フォークを持ったまま逆に臨也は不思議とそうに首を傾げた。

「なんで?俺と帝人君は恋人同士じゃないか。恋人が何やってるかとか、誰と喋ってるかとか気になって当たり前でしょ?ケーキだって帝人君に食べさせてあげたいから買ってきたやつだし。いらないなら別にいいよ?捨てるから。あぁ!そうか、お金を気にしてるのかな?だったら当然気になんてしなくていいさ、俺は金は腐るほど持ってるからね!帝人君のそういう人に気を遣っちゃうところも好きだけど、俺にはわがまま言ってもいいんだよ?」
「じゃあこれから正臣のとこに遊びに」
「却下」

一瞬の悩むことなく言いきり、パクリと自分でショートケーキを口に含む。
臨也には帝人の気持ちもよくわからない。

(だってこんなにも愛してるのに)

作品名:竜ヶ峰帝人の困惑 作家名:ジグ