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竜ヶ峰帝人の困惑

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セルティの家に帝人が家出してから3日ほど経った。
その間に、臨也からのメールや電話などの着信はない。

(かかってくると思ってたんだけど・・・やっぱり読めない人だなぁ)

岸谷家から学校に通うのももう慣れてきた。
そちらには会いに来たりとか、登下校中に「偶然だね!」とか言って飛び出してくるかなとも思っていたが、それもない。
ここで帝人が乙女的に「会いに来てくれないなんて・・・僕のこと、嫌いになったのかな」なんて考えると臨也が思っていたとしたら、

可哀そうなことだった。

(いないならいないで気になるなんて、迷惑な人だなぁ)

なんて帝人は考えていた。
そもそもあれだけアピールされていて嫌われた、なんて思うはずもない。
むしろ会いに来ないのが不気味だった。

というわけで、ここは裏的要素があるのではと張間美香に聞いてみる。

「張間さん、ちょっと聞いても良いかな?」
「あれ、竜ヶ峰君!どうしたの?誠二に関係あることなら全然相談してくれていいよ!」
「あ、いや、矢霧君の話とはちょっと違うんだけど・・・校内に盗聴器とか盗撮のやつって付けられてないかな?」

うぅん?と美香が天井を見上げる。
白く輝く蛍光灯を見ながら、1つ首をかしげると

「あるかもしれないね。でも私は学校では誠二とずっと一緒にいられるから、教室に付けようとは思ったことないから」
「そっか・・・見つけるのって、すぐ出来るもの?」
「うん!あ、やり方教えてあげるよ!」

教室内で突然行われた盗聴器講座に、クラスメイト達は目をそらした。
誠二と杏里も感心した顔で聞いているのが、不自然に非日常だったが、帝人は美香の話を聞くのに忙しい。
根は真面目なので、一々メモを取っている。

「・・・という感じで!でも一応ここ私立校だから、不審者は入れない仕組みだし、あんまり大がかりなものは仕掛けられてないと思うよ!」
「わかった。ありがとう張間さん」

にこにこと笑う2人に、「よかったですね竜ヶ峰君」と杏里が、「役に立つんだなそういうのって」と誠二がコメントする。
誠二に褒められたー!と美香が嬉しそうに笑いながら腕にしがみついている。
くるりと顔だけ帝人のほうへ向けた美香が、にこにこと無邪気な笑みを浮かべたまま告げた。

「でも変なの、竜ヶ峰君って。なんだか盗聴器あったほうが良いみたいな感じ、してるよ」
「えっ?」

その言葉に帝人はギクリとした。
そして反応してしまった自分にびっくりしている間に、美香と誠二は去って行ってしまった。

(あったほうがいい・・・?あったら・・どうなんだろう。怒って、叱って・・・それで)

納得できる答えを帝人が探し出せないまま、杏里が首を傾げた。

「盗撮とか、まだ続いているんですか?」

少しだけ心配に眉を寄せた杏里に、「えぇっ?」と帝人はわたわたと手を振る。
恥ずかしそうに目をそらすと

「あの・・臨也さんのとこから家出したんだけど、会いに来ないから盗聴とかしてるかなぁって思って・・・」
「別れるのを勧めます」
「そ、園原さん!」

罪歌が嫌う臨也のことを、杏里も当然好きではない。
しかも帝人の恋人にのし上がった男、奪った男である。
帝人に対して恋、と言うほどの感情を杏里が持っているわけではないけれど、帝人が臨也のことを好きならば仕方ないが、泣かせるなら

罪歌が嫌がっても斬る覚悟だ。
決意をみなぎらせる杏里に、苦笑して

「悪い人じゃないんだよ?」
「でも、迷惑な人です」
「・・・うん、ごめん」

自分も考えていたことを言われ、全く否定できない帝人だった。

作品名:竜ヶ峰帝人の困惑 作家名:ジグ