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風邪@ジュリオ訪問編

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 CR5の結束は、益々強くなるだろう。
 嬉しさとほんの少しの寂しさを感じるベルナルドは、ベッドサイドまで近づいてきたジュリオを見上げた。
「具合はどうだ?」
「ああ、まだ熱は下がりそうに無いが、大事無いさ。動けない程じゃない」
「そうか」
 そこでようやく、ベルナルドはジュリオの持つ紙袋に気付いた。
「……っ」
 気付かれた、とジュリオがはっと目を開き、そして視線が彷徨う。
「ジュリオ?」
「いや、見舞いに。ジャンさんが、行ったほうがいいと」
「はは、そんなに気を使わなくてもいいんだがな。俺のはただの不摂生だし、情けない話だよ」
「……日頃の感謝を示す時、でもあると言っていた。迷惑でなければ、これを」
 ジャンが切欠だったにしろ、ジュリオの行動にベルナルドは笑みを漏らした。良い傾向だ。
「俺にか?」
「風邪には、果物がいいと」
「そういえば確かに腹が減ったな」
 ジュリオの手には、真っ赤なりんごがあった。艶が良く、手に余るほど大きい。
「外に部下が居るから……」
 剥いてこさせよう、という言葉は、刃物のきらめきに掻き消されてしまった。
「……っ、ジュリオ?」
「問題無い」
「いや、だが」
 ジュリオの手の中には、愛用のナイフが光っていた。
「切るのも、皮を剥ぐのも、得意だ」
 りんごの皮は、剥ぐとは言わない! と心の中で叫び、ベルナルドは背を緊張させながら、神業のように均等に切られていくりんご達をただただ見守っていた。
 皮もぎりぎり薄く剥かれていく。その時、ジュリオは確かに口元を笑ませていた。
 ただりんごを剥いているだけなのに、なぜこんなにも嬉しそうなのか、それとも別の何かを見ているのか、ベルナルドは唇を結び、皮を剥がされていくりんごを固唾を飲んで見守った。
「切ることだけは、ジャンさんにも褒められた」
「はは、確かに、芸術的だ」
 食べやすいように一口サイズに切られたりんごは、皿の上でぴしりと整列している。
 食べろと突き出された皿から、ベルナルドは欠片をひとつ、口に含んだ。甘酸っぱい味は乾いた喉に、じわりと染み込む。
「……うまい、か?」
「ああ、美味いよ。ありがとう、ジュリオ」
「いや」
 感謝の言葉に、ジュリオは目を伏せる。
「風邪を、ひいてみるものだな」
「どういう、意味だ?」
「なんでもないよ」