奇跡の鐘の音
重たい足取りで外に出たサリエルの目には、美しい天界の空が映った。
「……美しい」
どれだけ月日が流れても、この景色は変わらない。空はどんな時でも心を癒し、神の恩恵を感じさせてくれていた。
だが、今のサリエルには形だけ美しい、絵をくり貫いただけのものにしか見えなかった。美しいことには変わらない。だが、心を打つ喜びが無い。時を刻み明日へ続く命が、そこには無かった。
「……神への愛を失った天使が、歪みを拡げる、か。ならば、この私も……」
神への疑問を持った彼方の日から、歪みは始まったのではないかと、サリエルは足を止めて、しばらく美しい景色に魅入った。