die vier Jahreszeite 004
金色のマドレーヌに,いちごのムースを巻き込んだロールケーキ。チクショウ。思い出したら,食いたくなっちまった。
甘いは甘いが味気ないケーキを完食すると俺はさっさと立ち上がった。
ないものねだりしても仕方がねぇ。仕事・仕事っと。
俺のシフトは午後一時から夜十時まで。
休みの間は普段の倍働けるから稼ぎも増える。
俺は含み笑うマシューの横で不機嫌な面にサンタ帽を載っけて黙々とおでんに具を足していた。
「それ終わったら外の掃除頼める?」
「諒解」
使った道具を片付けて外に出る。
吹き付ける北風に思わず身を竦めたが今更更衣室に戻って上着を取ってくるのも面倒臭い。
身体動かしてりゃすぐにあったまってくるだろ,と俺は箒とちりとりを片手にごみの散らばる駐車場を掃除しはじめた。
「あー,おるおる!うっわ,なんか被っとんで見てやフランシス!」
けらけらと笑う声が聞こえてきたのは概ね掃除を終えてそろそろ店に戻るか,と背中を伸ばしたときだった。
あ?と声の方に顔を向けると,見知った顔がふたつ。
黒いモッズ・コートにふわっふわのイヤ・マフをつけたアントーニョと,洒落たデザインのコートにやわらかそうなマフラを首に巻いたフランシスが駐車場の入口に二人並んで立って居た。
「…何やってんだお前ら」
近づいてくる二人を思わずぽかんとした顔で見た。
バイト先がここだということは教えてあったが,やってきたのは初めてだった。
まぁ,俺が来んなよ!て云ってあったせいもあると思うけど。
「メリー・クリスマース!……にしてもギル,よー似合うとるよその帽子」
「子ども,泣かせてないか?せっかくの聖夜なんだから今日くらいはちゃんと愛想よくしておけよ。……メリー・クリスマス」
語尾が笑って揺れているアントーニョに蹴りを繰り出すと「あっぶな!何すんねん!」と大げさな声。
やっぱり喉を鳴らして笑っているフランシスの鳩尾に肘を叩き込もうとすると「ストップストップ」と慌てた声がした。
「ちょ,フランシスこの凶暴サンタどーにかしてやー」
「誰がサンタだふざけんな。茶化しに来たならとっとと帰れ」
「んー,それもあるけど,でもそれだけじゃないんだなあ」
ふざけて怯んだフリをするアントーニョに凄むと,傍らでフランシスが意味深なことを云った。
何だよ,とそっちに顔を向けると,目の前に突き出されたのは小さな箱。
作品名:die vier Jahreszeite 004 作家名:葎@ついったー