少年への献花
医者は思う。恋とは楽しいものだ。美しいものだ。眩しいものだ。決して、あんな、最初から何も期待していないなんて目をするようなものではないはずなのだ。だから医者も恋人も、あれだけはやめておけと何度も何度も少年に言った。特に恋人は熱心に説得を繰り返していたけれど、少年は困ったように笑うだけだった。
恋は不可抗力。
医者にはそれが分かっていた。けれど。
「・・・葬儀にすら来ない、薄情者だよ、あいつは」
ねえそれでも、好きだから仕方がないんですよと微笑むのかい?
疑問を投げかけた遺影は、ただただ、穏やかに微笑んでいた。