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怪盗×名探偵 短編集

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それは罠です(快新)



 なんだか全てがとてつもなくくだらなく思えることでも勿論あったのだが、そういう経験も悪くはないだろうと取ってつけたような理由を並べて、とりあえず謝ってみた。長続きされると面倒だ。
「あーわるかったわるかった」 
 しかしそれで快斗の気が晴れるならば、くだらなく思えるような何かに行き当たることもないわけで、まあとにかくこんなもんで快斗の機嫌が直るわけもなく。外では蝉が鳴いている。
「悪いで済むと思ってるのがもう気に入らねえ」
「ああ? んだよ、こっちは殊勝な態度してやってんのに」
「その傲慢な感じがよろしくない、ぜんぜんよろしくない」
 この傲慢な感じが好きだというときもあるくせに。
 なんか面倒だなあ、と新一があくびをしそうになったところで、快斗はもう一度言う。「よろしくない、全然だめ」 なにが駄目と言われても過ぎてしまったことは仕方ないし、それを追求しているこの時間はとてつもなく無駄だ。
 新一にとってどうでもいいことは果てしなくどうでもいいのであって、忘れてしまっても仕方がなかった。
 快斗には悪いが、個人的にこういうプレイはいただけないのだ。なにぶん探偵なもので。
「だからって俺からのプレゼント捨てるのっておかしくない」
「怪盗からもらったもんなんて残しとくわけねーだろ、カメラついてたらどうすんだよ」
「し……信じられない」
 そこに愛はないのかよとでもいいたげな顔でそう呟く快斗の声はぶるぶる震えている。信じたくなければ信じなければいいのだ。別に。信じられなくて新一が困るようなことはない。
「明らかに怪しかっただろあれ。カメラとは言わなくても盗聴器ぐらい付いてたんじゃね?」
「新一は俺のことが好きなくせになんでそんなに生意気なの?」
「生意気な俺が好きだとかなんとか」
「うっうっ、そんな子に育てた覚えはありません! お母さんは悲しいです!」
 俺の母親はお前なんかより百倍破天荒だよ、と言ってやりたかったが、多分本人的にはお前に育てられた覚えはない、とでも言ってもらいたいに違いない。
「あっちの方向は育てたじゃん、とか言うんだろこの変態が」
「えっ……なんの話?」
「うっせ」
「うううッ、俺の心を読むなあ!」
 随分前に捨ててしまったそのプレゼントとやらは、一度目を通したきりだった。大きな紙袋に包まれた明らかに怪しい出で立ちだったそれを、開けてやっただけ感謝するべきである。目が覚めたら枕元にあるなんて心臓に悪い。
 あのキッド変装セットは今頃海の藻屑だろうか。
「逆パターンとかしてみたかったのに……紳士になろうよ!」
「……紳士ねえ」
 ということは、お前は俺の服を持っているということになるんだが。
 そういえば以前変装していた時も、まったく同じ形の服を新一は所持していた。それはもしかしたら、同じものを用意していたのではなくて、そもそも新一のものだった可能性が高い。ジーンズの裾が少し擦り切れていたりもしたし。
「ああ、お前やっぱり変態だろ」
「新一のほうが変態だよ、恋人からのプレゼントを躊躇なく捨てる変態だ」
「怪盗からの贈り物を大切にするやつがあるか」
「新一のバカ! この魔神!」
 なんだこいつ、欠陥品か?
 この会話にとても意味なんて見つけられなくて、新一はほんのすこし視線を遠くへやった。なにが悲しくてこの暑い夏の昼下がり、欠陥品の変態と会話をしてやらねばならんのだろう。一週間前荷物を届けにやってきたらしいあの怪盗は、確かに快斗なはずなのに。
「いくら暑いからって、欠落しすぎだ……」
「え、なんの話」
「頭」
「誰の」
「お前の」
「なっ なっ……!?」
 こういう、頭に血が上っている姿は、まともに見ようとすればかわいいと思えないこともない。だが言うにことかいて魔神である。普段あそこまでキザったらしいことを吐いているくせこれなんだから、快斗に戻ると知能指数が下がってしまう病気にでも掛かっているのかもしれない。
 そろそろ黙らせてもいい頃だろうか。
「快斗」
「なんだよッ!」
「俺が”キッドから貰った”ものを死ぬほど大事にしてたらどうすんだ?」
「どうするって」
「お前が提案した変なプレイになんて絶対使わないし、ショーケースに入れて完璧に保護するだろうな。日に焼けないように持ち出しなんてもっての他、むしろ俺はずっと眺めていたいと家からも出なくなる」
 ありえねーな、と口を動かしながら乾いた声が頭の中で響く。まあ、普通にありえないだろう。しかし快斗は目を丸くさせて新一を見ていた。不安気に眉が寄せられている。
 まごうことなきバカである。
「そんなにキッドのこと好きだったの?」
「可能性の問題だ」
「俺より?」
「だから可能性の問題」
「困る」
 真剣そのものといった表情は今にも泣き出しそうだ。新一の中でキッドと快斗はノットイコールであると思わせておけば、後々色々行動しやすい。キッドを捕まえても快斗を捕まえたわけじゃねーから、とか言い訳出来るのはなかなかよろしい気がする。
 よろしくない。快斗はそういうだろうけど。
「そっか、お前には俺がいるもんな」
「……まあそんなところだ」
「やべー俺いま超ハッピーかも」
 ものすごく腑に落ちないまとめをされたが、別にもうどうでもよかった。
 早く服を返してもらいたいものだ。


作品名:怪盗×名探偵 短編集 作家名:knm/lily