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怪盗×名探偵 短編集

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「思えば出会いからして工藤は薄情だった」
「どこがだよ。至って真面目でまともだったろうが」
「そんなことねえ。俺が決死の覚悟でお友達になりたい宣言したのに、『待ち合わせは?』って言った……」
「疑問の提示だろ、しかも至ってシンプルな」
「なんでその謎は解かないんだよ! 解明しろよなあ」
  相変わらずソファに腰を落としたまま、恨めしそうに呟く。クッションを抱きしめる姿が例えば女なのであれば、それは魅力的に映っただろう。しかし黒羽は女ではない。とてつもなく、限りなく男である。
 学園祭があったのは確か一週間前の話で、よくもまあここまで伸び伸びと他人の家にいられるものだ。そもそもあんな不審な友人宣言があってたまるかという話でもある。男同士が手に手をとりあって「お友達になりましょう」だなんて、端から見ればホモ同然だろう。しかも顔が同じときている。
 生き別れた兄弟の倒錯的恋愛話なんて勘違いされたら、この先生きていけない。
「お前、あの時なんで裏門って言ったんだよ」
「だって一番遠い場所じゃん」
「……やっぱりな、タチ悪ぃ」
「だって」
「だってじゃない」
 しょげた顔は酷いものだ。親に頭ごなしに叱られた時のような顔をして、それからぼすりと抱えたままだったクッションに顔をうずめた。余裕があるのか無いのか、頭がいいのか悪いのか、未だに測りかねる。
 本来の力を以てすれば一週間そこらあればいくらでも情報は得られただろうが、しかし工藤にとって黒羽は追求すべき謎ではない。無駄に共に過ごした中で、大体の見当がついてしまった。
 目は口程に物を言う、を体現している男だし、わからないのはその目的だけだ。それもまたくだらないことに違いない。顔が似ているところも、下の名前は明かさないところも、癖のように指を動かすところも、全てが全て自らを語りきっている。それで隠しているつもりなら、東の探偵も舐められたものだ。
 まあこれ以上パワーを使いたくないというのもある。単純に言うと。
 もうすっかり閉じてしまった本に意識を戻すのは簡単だった。もう一回読もうかと手をつけようとすると、いつの間にかこちらを向いていた黒羽の視線が痛い。
 お前だって自由にしてるんだから、というか自由にさせてやってるんだから、こっちだって自由であるべきだろうよ。
 工藤も目で訴える。怯まないのがまた厄介だ。
「なんだよ」
「工藤の薄情者」
「あ? 外、行くんじゃねえの」
「ごめんなさい」
「やっぱ行かねえ」
「ご、ご、ごめんなさい!!」

 半泣きの顔を見てちょっとだけ満足した。まあ、正体を明かすぐらいまでなら付き合ってやらないこともないのだ。
 なにせ俺は薄情者らしいので。


作品名:怪盗×名探偵 短編集 作家名:knm/lily