この歌を届けよう
見分ける術はただひとつ。何年たっても歳をとらないこと。これしかない。何百年と同じ姿で生き続ける。それが国だ。
しかしそれは今現在この場で証明できるものではない。
あと50年待ってくれればわかる、なんてジョークにしても笑えないにもほどがある。
とりあえず困った。強行突破してもいいが(国はそう簡単には死なないのだ)この後ロシアに会いに行くのに血みどろというのも頂けない。
途方に暮れる俺に兵士達はじりじりと距離をつめてくる。
どうしようもないな。いっそのことこいつら全員ボコって行くか。剣があれば兵士数人なんて銃を持っていたとしても負ける気がしないんだが。
と思ったその時鉄条網の向こう、つまりベルリンの方から一台の車がやってきた。
車は俺たちの前で止まり中から一人の男が降りてきた。
その人物を確認した途端兵士達はざっと姿勢を正し敬礼する。
「同志ブラギンスキ!!」
なんてことだ。まさかこいつがここに居るなんて。
「やあプロイセン。何かお困りかな?」
そう言ってイヴァン・ブラギンスキ、いや、ロシアはにこりと微笑んだ。
なんてタイミングがいいというか、どこかで見ていたんじゃないかというぐらいの間の良さで現れる奴だ。
呆気にとられて何も言えずにいる俺をにこにこと読めない笑顔で眺めながら兵士たちに俺を通すようにと指示をしている。どうやらベルリンまで送ってくれるらしい。なんだそのサービスは。後がこわすぎる。
兵士たちはなんとか通してくれるようだが今度はこちらを見る様々な思いの篭った視線が痛い。好奇心や興味本意ならまだいい。国なんて存在なかなか見れるもんでもなし、存分に見ればいい。注目されるのには慣れている。
しかし中に混じる敵意の視線、侮蔑の視線はやはり気味のいいものではない。
さっき怒鳴った通り俺はこいつらの敵だったわけで、更に相当悪名高かったので彼等の目にはきっと悪魔の権化のように見えるのだろう。
国自身の人格と上司の意向は別物だと言ってもきっと理解されないだろうから言わないでおくが。
それに何百年も生きていたらそれなりに色々やってきているし(特に俺は)、今更被害者面をする気もないし後ろめたさもない。
不躾な視線も甘んじて受けてやろうじゃないか。
車に乗り込むと隣でロシアがこっちを見ながら相変わらずニコニコしている。
何が嬉しいんだコイツは。