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日々、徒然

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その姿になにかしてあげたいと、焦がれるように思ったことを今も鮮明に覚えている。
助けてくれた人だからではなく。
震えるように純粋な人だと思ったから。
確かにそのときカブは落ちたのだ。
ソフィーという女性を。
守りたいと、ただ思った。
「・・・どうしてかしら・・・」
そっと目を伏せて、ソフィーはほんの少し考える。
ハウルの漏らした言葉に傷ついたことは確かだけれど。
「・・・きっと、ハウルに影響されたんだわ。あの人、髪の毛の色が気に入らないって癇癪を起こして闇の精霊を呼び出すし、ドロドロしたなにかに潜りこんで自失しの。・・・もう大人の男の人なのに。わたし、びっくりしちゃって。それで・・・どうしてかしら、わたしも我慢できなくなって、家から飛び出して・・・気がついたらわんわん泣いちゃったの。・・・あんなふうに自分の気持ちを外に出したのなんて、久しぶりだったわ。ずっと、我慢していくのが正しいとおもっていたから」
カブには恥ずかしいところを見せちゃったね、と微笑むソフィーにカブはただ笑った。
カブも、ソフィーと同じで感情は押し込めるものだと教えられてきた。
「それが、彼に敵わないところでしょうか」
小さなカブの言葉にソフィーは瞳で問い直したけれど、カブはそれには答えることなく、ゆっくりと席を立った。
「残念ですが、もう行かないと。まだ色々やらねばならないことが残っていて。・・・楽しかったです。ひと段落着いたら、また・・・逢いに来てもよろしいですか?」
「もちろん。いつでも歓迎するわ」
にっこりと微笑んだソフィーの手をとると、その手にカブは流れるような動作で口付けを落とした。
それから、驚いた顔をしているソフィーの頭に、そっとかフィーが届けた帽子を被せて。
「私の知る限りで一番素晴らしい帽子です。・・・よく、似合っている」
そういうと最後にウィンク一つ残して、カブは颯爽と歩みだす。
「あ、あの、カブ?」
慌てたソフィーの声にカブは振り返り破顔すると、大きな声でソフィーに言った。
「職人が心を尽くした品です!世界で一番心がこもっている贈り物です!それならお受け取りいただけるでしょう?!」
今まで聴いたことのないようなカブの声に、ソフィーはコクンと頷くことしかできない。
ことあるごとに、ことがなくても送り届けられるカブからの品々を、ソフィーはほぼ全て断っていた。
理由もなく、受け取れないからと。
それでも、自分が身につけるには高価すぎるそれに一瞬迷ったけれど。
けれど、サイドにあしらった宝石のブーケがいつかの流れ星に似ていて。
とても気に入っていたから。
今度カブに出会ったら、この帽子をかぶってありがとうと言おうと、それまでお礼はとっておこうと。
カブの去った後をソフィーは微笑んでみつめた。
作品名:日々、徒然 作家名:綴鈴