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Four promises

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「あー!ルナ。神田みたいになっちゃうさ!」

「それだけは嫌ですよ!?ルナ!!!」


アレンは神田といつもいがみ合う。
それゆえそれ関係の話には過剰に反応してしまうのだ。


「・・・分かったよ」


と小さく息を吐き、徐に服を脱ぎ出した。


「ちょっ、ルナ!服、脱ぎ始めるならちゃんと言って下さい!」

「もう覚悟は出来た」

「こっちはまだ覚悟が出来てないんですよ・・」

「俺はいつでも覚悟は出来てるさー♪」


ニヤっといやらしい顔で笑みを浮かべるラビ。
明らかに軽蔑の視線を送るアレン。
同じく体の動きを止めラビを無表情で見つめるルナ。


「・・最低ですよ・・・ラビ・・」

「見たら殺すからな。クソ兎」



少しは頼りになるな、と思った。
いつもヘラヘラしてるし、なんとなく優柔不断な気がしたから。
何回か一緒に任務をこなしたが、そういえばあまりヘマはしていなかった気がする。


そして、ラビとアレンはスラックスを身につけた半裸の状態、
ルナは(一応『女』なので)下着だけを身に着け、山小屋に落ちていた毛布を体に巻きつけていた。


「・・・別に脱いでもどうって事ないな」

「僕らはどうって事ありますよ・・・」


顔を少し赤らませ、俯きながらアレンは言う。


「とりあえず、暖炉と毛布はあって良かったですね」

「もう少しで凍え死ぬとこだったさ」

「・・誰のせいだ」

「「雪のせいさ(ですよ)」」

「・・そうか?」

「「そうですよ!?」」


アレンとラビは苦笑混じりに声を揃えて言った。


「もう寝るぞ」


ルナはそう言って体を横にした。
残された二人は顔を合わせ、同じように毛布にくるまって眠りについた。



翌朝、狭い小屋の窓からキラキラとした光が一閃差し込みアレンの顔に当たった。
寝る前に火を灯していた暖炉にはすっかり灰が積もっていた。
彼は目をいったん細め、そしてゆっくりと目を開いた。
周りを見回すとラビ、ルナはまだ眠っている様子だった。
このまま起こしてしまうのは気が引けるけれど、今は任務中だから・・・と自分に言い聞かせ、緩慢な動きで起きあがりラビに近づく。


「ん・・・起きて下さい。朝ですよ・・」


ふわぁぁと欠伸をしながら顔を上げた。
ラビも目を覚ましたようだ。


「おはようさ。アレン」

「おはようございます。ラビ」

「ん・・ルナは起きてるさ?」

「今から起こしますね」

「ん!俺が起こすさ」


俺の方が近いからな、そう告げてラビはルナの体を揺すった。
刹那―――――
昨日の出来事を髣髴とさせるような音がきこえた。
アレンの顔のすぐ横をラビの体がとんでいく。
ブーツの角かどこか掠ったのだろうか、頬から一筋の血が流れた。


「どこ触ってんだよ!?変態兎!」

「どこって・・・腰あたり?」

「死ね!!!」


起きたばかりとは思えないほどの動きでラビに対して怒りを向けているルナ。
そうこうしている間に乾かしていた服に袖を通し、着替え終わったアレン。
一行は山小屋を出て、目的の場所へと到達した。


「既にアクマに殺られたあとね」

辿り着いた街には人の気配すら無かった。
辺りには人の血の匂いが充満している。

「にしてもすごい惨状さ・・」

「今近くにアクマはいないようですね」


アレンは昔養父によってアクマにされかけた。
その時に負わされた傷によりアクマの魂が見えるという奇怪な左目を持っている。
周りから見れば、便利な道具、かもしれないがラビ曰く
『あいつの見てる世界って地獄だな』だそうだ。


「とりあえず、この街の北の方にある例の『神殿』ってとこに行ってみるか」

「そうですね」




壁一面に設置された本棚に数え切れない量の本が詰められている。
床には一面資料、報告書が散らばっており何かと落ち着かない司令室でコムイの声が響く。

「今回の任務は少々レベルが高いかもしれない」

「なんでさ?」

「イノセンスがあるかもしれないという場所は『神殿』でね、
昔から様々な伝説が残ってるらしいんだけど・・」

「それとさっきのこととどう関係があるんですか?」

「そうだね。そこは昔から何人もの探検者達が挙って散策に行ってるらしいんだが・・」

「幽霊に化けて出てきて邪魔でもするんですか?」

「「まさか」」


アレンとラビは声を揃え、顔が微妙な表情に変化する。


「いや、違うんだ。その神殿、迷路になってるらしくてね」


アレンは引きつった笑顔を浮かべて、青ざめていった。
彼は昔から、迷子になりやすい。
むしろ迷子になるのが性質のようなものだ。


「アレン君・・・大丈夫かい?」

「あ、はい・・」

「とにかく、その迷路のゴール地点にイノセンスがあるのね?」

「たぶんそうだと思うんだ。出来るかい?」

「私たちはエクソシストです。どこへでも」

「はは。君は神田君そっくりだね」


それがエクソシストの仕事です、と言葉を続ける私にうっすらと笑顔を浮かべて此方を見る。


「じゃあ、行ってらっしゃい」




街を出てしばらく北に向かって歩き続けていると、例の神殿に辿り着いた。
普通想像するような煌びやかな感じはせず、重苦しい闇に包まれたような巨大な神殿。
その入り口の前に立ち、ルナは鈴のような可憐な声を張り上げた。


「イノセンス発動! ソーニョリング!」


ルナの右手の中指に嵌められている銀に金の装飾を施された指輪が輝きだした。
まるでこの世の幸福の始まりを告げるような心満たされる光と共に現れたのは自らの意志を携えるルナのイノセンス、通称ソグ。


「はい、プリンチベッサ」

「今からこの神殿に入るわ。何か違和感を感じたらすぐに教えるのよ」

「分かりました。プリンチベッサ」

「さあ、入りましょう」


アレンとラビに向かって僅かに微笑み神殿の入り口の方へ歩いていった。


「アレがルナのイノセンスですか?」

「ああ、アレンは初めて見るんだったな」

「はい。なんか、意志を持ってしゃべってるように感じたんですけど・・・」

「全くその通りさ」


アイツはすげぇんさ、と言ってルナの歩いていった方へ駆けだしていった。
何が凄いんだろうと首を傾げながら足早に彼らが消えていった先へ慌てて進んだ。
大切かつ重要事項を思い出したからである・


「待ってください!!僕、迷子になりやすいんです!!!!」


黄色い小さなゴーレム――ティムキャンピーを肩に乗せた少年は、先の事を考えうっすらと涙を浮かべながら走って行った。




神殿の中に入ると、見た目もそうだが中も暗く重苦しい雰囲気を漂わせていた。

三人はソグを先頭に固まって先へ進んでいく。


「うわぁー、ホントに大迷路ですね」

「これはアレン一人だったらカンペキ迷子さ」

ラビはニヤニヤしながらアレンの方を見る。
アレンは頬を少しだけ赤く染めながら唇を尖らせてラビを見ていた。
そんな様子をお構い無しにティムキャンピーは辺りをとびまわる。

「お前ら、黙って歩けねぇのか?」


鋭いルナの眼光が二人を射止める。
二人は一瞬固まるがふと、アレンが徐に口を開いた。

作品名:Four promises 作家名:大奈 朱鳥