Happy Birthday
丸くなって籠もろうとする先輩の上に俺は被さった。
「先輩が声を抑えてくれれば、バレませんよ」
「そんなの…… 無理」
先輩の唇を指でなぞれば、柔らかい皮膚が震えながら言葉を発した。
「俺だって、先輩のえっちな声聞きたいですけど」
「駄目だよ、そんなの」
「俺の誕生日ですよ」
身を振るって俺から逃れようとする先輩を、俺は力で抑え付ける。先輩のが少し背は高いが力は弱い、俺も強い方じゃないけど、先輩は弱い方だ。
「昨日の話じゃないか」
今まで攻防で目が覚めたのか、先輩は力強い眼差しで俺を見据えた。
「先輩…… 駄目ですか?」
そんな鋭い顔付きの先輩に媚びるように、俺は上目遣いで訴える。少し目元に涙を湛えて強請る表情に先輩は弱い。
「もう、仕方ない無いなぁ、青葉君は……」
口を尖らせて不平を言うが、その実満更でもないことは解っている。熱を帯びた瞳からは睡魔は去り、今や違う魔物が宿っていることを俺は知っている。
「俺 いっぱいキスしますから、あいつらに先輩の声聞かせたくないんです」
「なに言っ…… んん」
あいつらの前で先輩を犯し、嘆き喜ぶ姿を見せつけたい衝動に駆られたことがないと言えば嘘になる。だが、俺以外の人間がそんな目で先輩を見ることには耐えられない。俺だけが、先輩を情欲の対象とし、俺だけがその身に触れることができるのだ。
「先輩、好きですよね? キス」
否定しようとする嘘つきな唇を、荒々しく塞ぎそして俺は問い掛けた。先輩はキスが一番好きだ。軽くキスしただけで、溶けるよう体から力が抜けていく。
「……す……き」
赤く染まった頬が柔らかく形を作った。そのまま言葉を発する仄かに色付く輪に、俺は食らい付いた。
作品名:Happy Birthday 作家名:かなや@金谷