桔梗
乱太郎視点
「…きり丸に見られるとは」
少し油断をしていたかと思う。
「でも…、大丈夫かな?」
きり丸としんべヱが人形とは知らずに抱きついているであろう、自分の分身。人形と幻術を組み合させて体温を感じるように細工した。幻術は触られれば消える。人形は冷たいまま。それでは役には経たない。
「…念のため、記憶操作はしておこうかな」
「…何をブツブツいってるんだい?」
走るりながら自分についてきたのはタソガレドキ忍者の頭領:雑渡昆奈門と部下の諸泉尊奈門だった。
「なんだ、今回の依頼人はあなたですか」
「そうだよ。巻物の奪還に付き合ってくれないかい?」
「なんで、そんな簡単な忍務で私が呼び出されるんですかね?」
「それは頭領がキミをスカウトしたいから」
「お断りしますけど、仕事はやりますよ」
「また振られた」
「だから、お答えは一緒だっていってるでしょ?」
「だって、華乱(から)がほしいんだもん」
「頭領、だもんはやめてください」
「いいじゃないか。キミだって華乱にきてほしいと思わないかい?」
「そりゃ…そうですけど」
諸泉の言葉に華乱はため息だ。この二人はいつもそうだ。簡単な依頼をしてはスカウトをしてくる。この仕事をはじめてからずっとこんな感じだ。
「あなた方もシツコイですよね」
「だって、キミがほしいしー」
「僕も来てくれたら嬉しいけどね」
「だから…」
そこで、言葉が止まる。
「…お仕事ですね」
「そうだね」
「じゃあ、行きましょう」
諸泉の言葉で動く。闇が動いた。
闇は闇のまま
その世界から動くことはない
けれど
そこに光はあって
それがこの存在だと思っている
闇の中で闇に染まることのない光
小さい風は世界を変えていく
まだ小さな風だけれど
それが大きくなるのはまだ先
風神の申し子 華乱(から)
それが…乱太郎のもう一つの顔。