桔梗
門の前で一人いたのは、きり丸。忍務に行って帰ってくる乱太郎を待っているのだ。
「何やってんだよ。乱太郎に奴」
心配で心配でしょうがなかった。大切な大切な親友。そして、自分が帰ってくる絶対的な場所。それは学園であり、乱太郎であり、は組の皆。家族を失ってから初めて出来た居場所。先生がいて友達がいた。そして一番安心出来る場所は乱太郎としんべヱの隣であることをもう知っている。知らない頃になどもう戻ることはない。
乱太郎の本当の姿を知ったあのとき守られていた自分が悔しかった。なにも出来なかった自分が。しんべヱも同じだったと思う。乱太郎は何事もなくかかってきた敵を打ち倒した。それは一瞬の出来事。全てが終わったとき乱太郎は悲しそうに笑った。それが今も忘れられない。
「…あんな顔、もうさせたくないんだよ」
それから少しして、乱太郎は学園から去ろうとした。既に知る者達がひきとめたけれど。
『乱太郎を一人のなんてさせない』
それを思ったのは共通の想い。
「強くなりたい」
乱太郎を守るために。
何事からも乱太郎を守るために。
ただ、それだけ。
「どうすれば、強くなれるのかな」
きり丸はただ一人つぶやいた。
乱太郎より強くなるためには、それ相応の力、そして知識が必要だ。それは、わかっている。だが、それでも乱太郎より強くなれるとは思っていない。
「ん…」
少し考え込むきり丸。
そこに、声がかかった。
「きり丸」
「しんべヱ」
「僕もいるよー」
「喜三太」
「どうしたんだよ。二人とも」
「ん? もうすぐ乱太郎が帰ってくる時間かなと思って」
「そうそう。きり丸もだからここで待ってるんでしょ?」
「ああ」
三人は顔を見合わせて笑った。乱太郎が心配。ただそれだけ。
「ねぇ、きり丸」
「なんだよ」
「きり丸…強くなりたいって思う?」
「しんべヱ?」
「大切な人を守れるように…強くなりたいって思う?」
「喜三太」
二人が誰の事を守りたいかなんて聞かなくてもわかる。
「思う。オレ、絶対に強くなってやるんだ。さっき決めたんだ」
「そっか。…それ、僕たちも乗っていい?」
「ああ、一緒に強くなろうぜ?」
きり丸の言葉にしんべヱも喜三太も頷いた。そこにまた違う声が聞こえた。
「それ、僕らも追加ね?」
「そういうこと」
「伏木蔵。庄左エ門」