桔梗
本当の姿なんて見せる気はなかった。
でも、あのときそんなこと考えている暇なんてなかった。
大切な親友達が『死』に関わってしまうなんて嫌だった。
そう、友達が親友が死んでしまうかも知れないというときに、自分の本当の力を隠すことなんて出来る訳がなかった。自分の力で助けられるのに。助けられる力がいまこの手にあるのに!だから、両親から言われた言葉なんか頭がから消えて
いた。 それはいつもの学園長からのお使いから始まった。頼まれたお使いを終わらせ、帰る途中の出来事だった。
「無事に終わったねぇ」 「オレ達にとっちゃ、珍しいよな」
「きりちゃん、それじゃあ私達がいつもトラブルに巻き込まれるみたいじゃない?」
「乱太郎は否定できるか?」
「う…」
きり丸に言われて、即否定ができない。
「僕ら、歩いたら何かあたるような感じだもんねぇ」
「そうだよなぁ、その筆頭が乱太郎だし」
からからと笑うきり丸に乱太郎は苦笑するしかない。きり丸のいう通り、何かトラブルはいつも自分が持ち込んでしまう気がするのは間違いではないのだから。
「さ、帰ろう!」
「ああ」
「うん!」
乱太郎の言葉に二人も頷き学園へと歩きはじめた。
そして、それは唐突に起こる。
乱太郎に聞こえたのはイクの声。それは、乱太郎にしか聞こえていない。だが、そこは危ないと知らせる声。
「…きり丸、しんべヱ」
「なあに?」
「乱太郎?」
それは唐突に始まった。乱太郎の言葉で後ろを向いたとき、乱太郎がくないを持ち、見知らぬ忍術の攻撃を受けていた。きり丸としんべヱは驚く。
「え?」
「何?」
すでにその出来事に頭がついていっていない。乱太郎は、そんな二人を守るように動く。
「きりちゃん!しんべヱ!そこから動かないで!」
「乱太郎!」
「乱太郎」
「イク!ヤミ!二人を守って」
乱太郎が呼ぶと同時に二人の前に現れたのは普通より大きい狼と梟。二人は驚いたものの襲われる事ないとわかる。何よりも乱太郎が呼んだのであれば尚更だ。背中合わせでいたきり丸としんべヱの近くに二匹はくる。
「がう」
「ぴぃ」
狼がきり丸の傍に。梟はしんべヱの肩に乗る。
「守ってくれるのか?」
「よくわかんないけどありがとう」
二人は、武器を持っていない。身を守るにしてもそこらへんにあるものを利用するくらいだ。
「何がはじまったんだよ!」