桔梗
「乱太郎!」
当惑する二人。だが、そこに説明をしてくれる者は誰もいなかった。
少し離れた場所で、乱太郎は大人の忍者と切りあっていた。
「あなたの目的はなんですか」
「それを言うと思うか?」
「プロなら言いませんね」
「なら、大人しく殺されとけよ!」
乱太郎に切りかかる。
「そんな簡単に殺されるつもりはない」
「お前ら、子供に何ができる」
忍者は、笑う。ただの子供だ。ある城からの依頼。忍術学園の子供を殺せ。ターゲットは任せるという依頼だった。その城の城主は学園に恨みを持ち、そしてその報復として子供を殺そうとした。
「なあ、オレが一人だと思うか?」
「一人じゃあないでしょうぬ。こんな作戦の場合は殺すターゲットと同じ人数が必要だから」
「お友達が危ないっていうのに余裕だな?」
忍者の言葉に乱太郎は笑った。そう、笑ったのだ。
「何がおかしい」
「そんなの、あなたに笑ってるだけですけど」
「おちょくってるのか?」
泣きも喚きもしない餓鬼にその忍者はいらつく。今回の仕事はそれが楽しみだというのに。
「いらつくな。泣けよ、喚けよ!お前、今から殺されるんだぜ?」
「それが?」
「今回の仕事はそれが楽しみだってのによ」
その男の言葉に乱太郎は冷静に返す。
「そんなもの、あなたの都合でしょう?私には関係などない」
乱太郎の言葉に男はカッとする。
「生意気な餓鬼だな!一息に殺してやるよ!」
「…あなたにできるのであれば」
「何を!」
乱太郎に言われて動こうとしたが身体が動かなかった。理由がわからない。
「なんで、動かないんだ!」
「あなたはこの仕事を楽しむあまり周りをよく見ていなかった。それが敗因。私が何故親友から離れて、あちこちに動いたと思います?」
乱太郎が両手を動かす。それと同時に男の武器が地に落ちた。
「なっ!」
「理由、わかりました?」
クスリと笑い、乱太郎。男は恐怖を覚えた。
「な、何をした!」
「あなたの周りに糸を張り巡らせていただきました。ただの糸ではないですよ?」
指がピンと糸を弾くと、男に小さな傷が増えていく。
「やめろ!」
「おや、あなたが言ったんですよ?私たちを殺すことが目的だと」
男は混乱していた。何故、こんなことになっている? ただ、子供を殺すだけの簡単な仕事。なのに何故、自分があぶなくなっているというのか!