桔梗
担任二人は、乱太郎が自分たちにちかづいつこないことに不思議に思う。
「乱太郎?」
「どうかしたのか?」
「いえ、なんでもないです。それよりも早くもどりましょう?私…」
言葉をいう前に、乱太郎がその場でパタリと倒れこんだ。驚く四人。
「「乱太郎!」」
「土井先生!」
「ええ、わかっています」
土井は、乱太郎を持ち上げる。どうやら、気を失っているようだった。 きり丸としんべヱは泣いて乱太郎の傍にくる。
「乱太郎ぉ」
「先生!乱太郎は大丈夫なんですか!」
「大丈夫だ。極度の緊張による疲労だろう」
「山田先生、私は先に乱太郎を連れて帰ります」
「私も二人と急いで帰ります。いいな?二人とも」
「「はい!」」
土井の姿が消える。
「乱太郎…」
「大丈夫だ。二人とも駆け足で帰れるな?」
「「はい」」
三人も学園へと走った。
学園に帰る途中で土井は抱えている乱太郎にいくつかの切り傷があることに気が付く。
「これは」
忍者が持つ暗器の傷だとすぐにわかる。きり丸としんべヱにはなかった。
「乱太郎、お前もしかして自分を囮にしたのか?」
あながち間違ってはいない。乱太郎は倒れる寸前に、血の匂いだけは消していた。忍者であればすぐにわかるだろうから。
人を殺したことが。誰にも知られる訳にはいかない。それが先生達であっても。両親から言われたこと。
『学園の者に自分の正体を隠せ。何があっても』
それが学園にいくときの約束。ばれたときは、学園から去り華乱として生きると。乱太郎は意識のないまま自分の手を血がにじむほどに握りしめていた。
『…本当はここにいたいんだ』
学園についた土井は乱太郎を抱き、保健室へと直行する。
「新野先生!」
「土井先生?」
そこにいたのは、新野と保健委員である左近と伏木蔵。二人は乱太郎が抱えられていることに驚く。
「「乱太郎!」」
「訳は後で。この後に山田先生ときり丸としんべヱも来ますから」
「わかりました。乱太郎くんを寝かせてください」
土井は指示された場所に乱太郎をねかせた。
「左近くんは、血止めの薬草を煎じてください。伏木蔵くんは乱太郎くんを拭いてあげてください」
「はい!」
「はい」
子供たちは指示どおりに動き始めた。
「…何があったんですか?」