桔梗
「…この。まぁ、そんな口を叩けるんだったら、大丈夫か」
そんな中で、乱太郎が目を開ける。
「…ここ」
「「乱太郎!!」」
「大丈夫か?」
「どこか痛くない?」
側にいるのがきり丸としんべヱ。そして、伏木蔵と左近だということに気がつく。ということは学園に戻ってきたのかと判断した。
「…ここ、保健室?」
「そうだよ。土井先生が先に連れてきてくれたんだ」
「そっか…」
まだ、朦朧としている乱太郎に新野が話かける。
「乱太郎くん」
「新野先生…」
「今の状況は判断できていますか?」
「はい…。私、倒れたんですか?」
「そうです。それを土井先生が運んできました。あなたの怪我は左手以外はかすり傷ですよ。ただ、疲労がひどいようですので幾日かは静養のため安静にしてください。部屋の外に出るくらいなら問題はありませんがね」
「わかりました…」
「きり丸くん。しんべヱくん。乱太郎くんのことお願いしますね?」
「「はい!!」」
ここにいる誰もが思ったことなんだろうか。乱太郎が何処かに行ってしまいそうな感覚を持ってしまったのは。
「乱太郎、立てる?」
「うん、大丈夫」
いつもの笑顔でいつもの声で乱太郎は答える。
「伏ちゃん、左近先輩。ありがとうございました」
「保健委員だからな…」
「お見舞いにくからね」
そんな答えに乱太郎は笑い、保健室から出ていった。
「先輩…」
「なんだよ…」
「なんで、こんなに不安な感じが残ってるんですかね」
乱太郎がいないだけなのに。
「お前もかよ…」
「乱太郎…どこにもいかないですよね」
「…あいつがいる場所はここだろ」
そうここ以外でどこにあるというんだ。そう言い聞かせるしか今はなかった。
「乱太郎」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫。二人とも心配性だね。それよりも二人は大丈夫? ヤミとイクがいたけど怪我とかしてない?」
「オレ達は何もされてないから大丈夫だ。お前が…全部やってくれたんだろ? だから、大丈夫」
「そ…か…」
「乱太郎?」
「ごめん…。ちょっと眠いみたい」
薬に配合されていた鎮静剤が効いているのだろう。乱太郎は眼を閉じる。
「…きり丸、しんべヱ」
「何?」
「どうした?」
「…怖い思いさせてごめんね」
乱太郎はそういって眠りについた。
「らんたろう…」
「なんで、そんなこというんだよ!」