桔梗
喜三太と庄左エ門
なんか私ってば、あれからこんなことばっかりになってない…? 本当についてないなぁ…。
そこにいたのは一年は組の庄左エ門と喜三太。
仕事の途中で会ってしまった。
それを偶然と言っていいのか。それとも自分の不運が呼んだのか。
「庄ちゃんも喜三太もそこから動いちゃダメだよ? 死にたくないんだったら」
それでもこの同級生を放っておく訳にもいかない。それにここで死なせる気などさらさらない。巻き込んでしまったのは自分なのだ。
「ら…」
「庄ちゃん、その名前は今は言わないで。私の名前は華乱というの。きさちゃんも呼ぶならその名前で言って」
「わかった…」
「うん。わかったよ」
「イク! ヤミ!」
「がうう」
「ホー?」
「ちょっと、敵さんの相手を頼むよ。すぐに戻るから。後、眷属の皆にも手加減するくらいでいいからやっていいよって」
「がう」
「ホー!」
二匹はそこからいなくなった。
「とりあえず…二人ともなんでこんなところにいたのさ」
「…学園長のお使い」
「また…あの人は! なんで、一年生だけで戦場近くの方にお使いに行かせるんだよ」
それも、護衛らしい者もいない。前にあれほど言ったというのに。
「まったく、学習しないのか。あの人」
乱太郎の言葉に前のことを言っていことに庄左エ門が気がつく。
「ってことは、前に助けてくれたのも華乱なんだよね」
「そうだよ」
「それって、庄左エ門が捕まったときのお話?」
「そう。あのときヤミがスエに頼んで伝えにきたからすぐに動いたの。じゃないと、庄ちゃん死んでたかもしれないんだからね?」
改めて言われて庄左エ門はぞっとした。
「まったく、なんでこうもは組のみんなにばれちゃうのかなぁ…」
「え?」
「僕ら以外に知ってる人がいるの?」
「きり丸としんべヱだよ」
その言葉を聞いた時、この頃二人が乱太郎から離れるのを酷く嫌がっていたことを思い出す。
「だから…か」
「何が?」
喜三太はあまりよくわかっていないらしい。
「ねぇ、今は華乱の忍務なの?」
「そうだよ喜三太。ここは私の庭みたいなもんでね。カラクリとか罠がいっぱいなの。だから、敵を呼び込んで殺すには…ちょうどいいんだよ」
「…」
「今日の忍務は、『殺し』だから。…二人とも軽蔑する?」
悲しそうな瞳には諦めがあったような感じがする。