桔梗
その頃、乱太郎は保健室で眠っていた。側にいたのは伏木蔵のみ。乱太郎は疲労で眠っていた。
「乱太郎…」
この頃、ずっと怪我をしては保健室に来ていた。そして、手当をされ自分の部屋に戻っていった。どうして、怪我をしてくるのか。それを聞くと乱太郎は決まって穴に落ちたとか木から落ちたとか。動物を助けたとかいつもの理由が返ってきていた。
「…でも、それは違うよね?」
伏木蔵は気がついていた。怪我の理由を上手く隠してはいたけれど。先輩達や先生達に気付かれないように上手く隠された怪我。治療の際、いつも側にいたのは伏木蔵。だから、傷を知っている。だからこそ気になった。
「キミは何を隠しているのかな?」
そんな伏木蔵の言葉に答える声があった。
「伏ちゃんには…やっぱりバレちゃうんだ」
「起きてたの? 乱太郎」
「うん。元々そんなに睡眠はとらないんだ」
「睡眠をとらない…?」
「うん。もう昔からの癖みたいなもんでね。…きり丸としんべヱの所だと結構眠れるみたいなんだけどさ」
「そっか」
「伏ちゃん」
「ん?」
「聞きたい事…あるなら聞いてもいいよ?」
「でも…、乱太郎は聞かれたくことじゃないの?」
伏木蔵の言葉に乱太郎は苦笑する。
「そうだった…そうだったけど。もう伏ちゃんいは隠し通す事が出来ないかなって思ったから。それに」
「それに?」
「もう…」
乱太郎は開いている障子の外を見る。四人にそして伏木蔵に話してしまうのであれば五人。それは両親との約束を破ってしまうことになる。多分、少し先には自分はここからいなくなる。ならば、伏木蔵には話しておくべきだと乱太郎は思ったのだ。きり丸としんべヱ。そしては組以外で一番一緒にいる同級生。一番、自分を知っていると思う。一緒に保健委員になり、一緒に学んだ治療の方法。知ってはいたけれど独学の学びだ。それを教わることは楽しかった。まだ、この学園に入ってからそんなに長い時間が経っている訳じゃない。まだ学びたいことはある。それでも、両親との約束は絶対だ。
「なんでもない」
そんな乱太郎が気になったが、何も聞けなかった。
「伏ちゃん?」
「…じゃあ、聞こうかな?」
乱太郎を落ち着かせるように伏木蔵は口を開いた。
「直接聞いちゃうよ? 乱太郎、キミはプロ忍である華乱で間違いないよね?」