桔梗
乱太郎は父を真っすぐにみた。これが最初の反抗になるのかもしれない。乱太郎は今まで全てを両親のいうままに動いてきた。忍術の英才教育。全て吸収した。尊敬する両親。自分をここまで育ててくれた。
「…まったく。母ちゃんの言うとおりになったな」
「…え?」
父は母を見る。母は笑ってこういった。
「当たり前です。私らの子供ですもの」
「母ちゃん?」
「乱太郎、私はね。お前がずっと一人で生きていくのではないというのが怖かったのよ」
母は乱太郎の側に座り自分の息子の髪を梳いた。
「母ちゃん」
「私も父ちゃんもお前より先に逝く。それは必然的。あなたは多分一人で生きていけるでしょう。この時代、忍の仕事などピンきりであるからね。でも、そのまま…いきては欲しくはなかたんだよ」
「私は最初は、母ちゃんに反対だった。お前はそのまま生きていけばいい。この時代だからこそ、その『華乱』という忍で生きればいいと思った」
父も乱太郎の側に座る。
「だがな、少し考えたんだよ。こんな世の中だからこそ、お前ぐらい私たちと違う生き方が出来るんじゃないかとな」
「父ちゃん」
「お前はお前の道を選べばいいんだとな。そう、私たちが引いた道ではなくお前が考える道に進めばいいんだと思うのだ」
父と母の言葉が嬉しかった。
戻ってきたのは、学園から出ろと言われると思っていたからだ。そう約束したのだから。だが、現実は違っていて。
「…父ちゃん、母ちゃん」
「なんだい?」
「なんだ?」
「私…忍術学園にいても…いいの?」
「ああ」
「でも、…正体がバレタときは」
「そう言わないと、お前は学園にいくことはしなかった」
「お前の性格はよく知っているからね」
乱太郎は思っているよりは負けず嫌いなことを利用したともいうのだろう。あの頃の乱太郎は華乱としだけ生きるつもりでいた。だが、母はおれを心配した。父も同じだったが、それを表に出すことをしなかった。
「乱太郎。私たちがお前を呼び戻したのはそれを伝えたかったんだよ。お前はあの学園で守りたいものが出来た。離れたくないという親友達を得た」
「お前はその親友を自分の持つ力で自分の正体を明かしてもいいと思うほどの仲間を得た。ならば、それを付きとおしなさい。もし、挫けそうになって、どうにもならないのなら。私たちにいいなさい。どうにでもできる」