幸せの足音
ユズハの歩調にあわせた、ハクオロの足音。
いつもは忙しく歩いているハクオロの足音が、今はゆったりとしている。
一歩一歩確実に踏み出す足取り。
そこに自分の軽い足音が並んで歩いているのが、ユズハは嬉しかった。
長い廊下の角を曲がるハクオロに、ユズハは首をかしげる。
「ハクオロ様?」
ハクオロが進もうとしている方向は、ユズハの部屋とは逆方向。
確か、自分を部屋まで送ってくれると言っていたはずだ。
何か用事でも思い出して、見送りはここまでなのか、と少し不安になる。
「ああ、気分転換にな。少し散歩につき合ってくれないか」
「ベナウィの目もない事だし」と付け加えられる言葉に、ユズハが微笑む。
少しでも長く、ハクオロの側にいたいユズハにとって、願ってもない言葉だった。
「……ハイ」