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巫女さんなシズちゃんと帝人くんの話

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セルティに連れられてやってきたのは自分より幾分小さな人影だった。
「あ、竜ヶ峰くん、おはようございます」
「お、おはよう園原さん、セルティさん…えっと」
『ああ、ごめん紹介するよ。彼は平和島静雄』
やや長めの黒髪を揺らして平和島という少年は礼儀正しく頭を下げた。
「平和島静雄です。初めまして」
「あ、あの竜ヶ峰帝人です。初めまして、よろしくお願いします」


◇ ◇ ◇


池袋の中に神社があるなんて初めて知った。
小さな、でもしっかりとした造りの社。
そこへ慣れた様子で少年が進んでいく。本殿の裏手に民家があった。

「今日は泊まっていけ」
「え?で、でもご迷惑じゃ…」
「構わねぇよ。むしろお前が一人で家に帰るとそっちの方が危険だと思う」
傍目には小学生に諭されている高校生。

「それにしても、…本当に、大丈夫かな」
「なにが」
「…あのね、…妖怪って僕全然見たこともなくて、
自分が色々襲われたときも怖かったけどあんまり実感が湧かなかったんだ」
「…変わった奴だな」


◇ ◇ ◇


障子の向こうに不意に気配がした。
今日は月のない日だ。
雲があちらこちらに広がっているためか星の光も遮られ、周囲は闇に包まれている。
こんこん、とノック代わりに障子の横の柱を指の背で叩く音がする。
「おーい、帝人くん、遅くにごめんよ、起きてる?
ちょっと見てもらいたいものがあるんだけど…」
その声は新羅だった。

「?」
彼もこの家に来たのだろうか。
来ないと言ってたのに、それならもう少し色々買ってきたのに。
明日の朝食はどうしよう。
静雄にも新羅が来たことを教えた方がいいだろうか。
横に寝ている彼を見ると安らかな顔で眠ってしまっている。
起こすのは忍びないのでそろりと静かに起き上がって障子の方へ歩く。
携帯で確認すると時刻は深夜2時すぎ。
ぼんやりした頭でふらふらと起き上がりながら
「しんらさん、みせたいものってなんですか…」
と障子に手を伸ばした。
瞬間、着物の裾をがしりと掴まれて後ろに倒れこみそうになる。
「ふあっ?」
「だめだ帝人。絶対開けるな」
尻もちをついた自分の後ろにはいつ目覚めたのか、ぴたりと添うように静雄がいた。
「し、静雄くん…いくら新羅さんが非常識な時間に来たからって
それはひどいと思うよ」
外からは相変わらず間延びした声で「帝人く―ん」と新羅の声がしている。
かたかたと障子を揺らす音も。
「違ぇよ。新羅は決してこの家には来ないと言った。
もし事情が変わってくることになったらあいつは携帯に連絡を寄越すはずだ。
それにな、
今は俺がこんなナリになっちまってるせいで《入って来れちまう》んだよ」
「な、何が…?」
「あいつは新羅じゃない」

静雄の声にぴたりと声がやんだ。

ばっと障子の向こう側を食い入るように凝視する。
外からの光が全くないせいで人影も何も写らない。
すでに声も音も何もしないが
ただただ何かがいるであろう気配だけが恐ろしいほどはっきり感じ取れる。
理解したのだろう、ぶるりと肩がひと際大きく震え、
小刻みに震え始めた少年の体をきゅうと細い腕が抱きしめた。
「大丈夫だ帝人。こちらから開けなければ入ってこれねえ」
「……ほ、ほんと…?」
ほぼ完全に静雄に縋りつくようなかたちになっているが障子一枚を隔てて
何か得体のしれないものがいる、という事実はどうしようもなく恐ろしい。
「ああ。一応この家は腐っても聖域だからな。
廊下と外は守りが薄いが部屋ごとの結界は強力だ。
だからああして誰かの声真似をして開けさせようとしてやがるんだ」

「……」
決してこちらが開けないことを悟ったのだろう、
外にいるものはあぉおおう、と犬のような赤子のような鳴き声を上げて
ぐるぐるぐるぐると障子の外を足音高くうろつき始めた。
「ひっ…」
ぎゅううっと目をつむって静雄の胸元に顔を埋める。
両手は彼の浴衣の襟をがっちり握って離さなかった。
あやすように彼の小さな手が猫にするように髪を撫でてくれる。

「大丈夫だ、入って来ないから。朝になりゃ消えてるよ」
「……ふぅう…っ」
『絶対に入って来ない』と言われても怖いものは怖いのだ。
ぼろぼろと涙がとめどなく溢れて浴衣の生地にしみこんでいく。
「帝人…そんな泣くなよ」
「……だっ…て…こわい…」
ぎゅうううと絞る勢いで胸元の生地を握りしめる自分に
小さくため息が落ちてきた。
ちゅ、と柔らかい感触が頬にする。
「?」
ちゅ、ちゅ、と続けて温かくて柔らかい何かが顔じゅうに当てられている。
「なに…?」
そろりと目を開けると最後に唇に当てられた。
すぐ間近にある静雄の顔。柔らかな、唇の感触。
口づけられている。
「…あ…」
不思議と嫌悪感も羞恥も感じなかった。
ただただ安堵が広がっていく。
ほっと肩の力を抜いて彼に預けた。
そのまま唇を触れ合わせたまま、眠りに就きそうになる。
「帝人…」
「しず、お…く…」
ぴちゃりと音がした。触れ合わせた温かな口に何か熱くてぬめったものが
ぴたぴたと叩くように動いている。
「…?」
ノックするように押されるがまま口を開くとそろりとそれが入ってきた。
「ふ、…ぅん、……はふ…ぁっ」
それは舌だった。お互いの舌を絡めるように、吸い上げるように
熱くて柔らかくて、ダメだもう考えられない。

そっと寝巻を肌蹴られて胸元を探られていく。
胸の先を執拗にいじられてくすぐったい様な痛みを覚えた。
「静雄くん…そこやだ…」
「…ん…」
身をよじって逃げようとするが圧し掛かられているせいか
上手に身体が動かせない。
そうこうしている間に少年は胸元に顔を寄せ、何かを吸い上げた。
「……っひ!?」
母親に甘えるように胸を吸われて驚愕するより茫然としてしまう。


◇ ◇ ◇


ぱちりと目を開くと柔らかい光に浮かび上がる
木の天井が目に入った。
自分のマンションは古いがさすがに木製ではない。
ここは、と考えて
茫洋とした意識が光につられて覚醒へと向かう。
ころんと寝がえりを打つと誰かにぶつかった。
「あ…ごめ…!?」
そこに黒髪をみつけた瞬間、洪水のように昨夜の出来事がフラッシュバックする。
神社のような家、真夜中の招かれざる客、そしてそしてそして
「……!!!」
静雄ととんでもないことをしてしまった、どうしよう、
相手は子供なのに、どうしよう将来が、警察が、どうしようどうしようどうしよう…!