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いつかに失った季節の話

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ある夏のこと

 ジリジリと焼く太陽は、あらゆる物を傷ませる。
 気づけなくなる程そこいら中に、傷んだ、死の香りが溢れかえって、その中を必死に生きていく生と、死をとても強く感じる。
 夏の空は青々として高く高く、天国まで覗きこめそうに、何時だって其処にある。
 夏は生と、死がとても近くにあるから。人間はどんな状況にあろうとどんなものが近くにあろうと、慣れてしまう生き物だからいけない。人間は死にすらも慣れる。
 慣れてくると、研ぎ澄ましていた注意も少しだけ緩んでしまう。

 そう、慣れてしまったのがいけなかった。
 暑い日の木陰。
 皆が太陽の光にぐったりとする中で、唯一元気に葉を茂らせて其処にある樹に、安らぎと共に緊張を解いてしまった。
 そう。油断したのは、俺だ。
「綱吉っ!」
 一緒に過ごすようになって、初めて聞いたかもしれない、雲雀さんの焦った声。
 何もしてなくても汗の伝うほど暑い日だっていうのに、彼は何時も通りの黒いスーツ。
 脱水症状にならなければいいんだけどと、関係ない事を思いながら、意識を手放した。

 悪いのは全部俺で、あなたは全く悪くないんです。


 慰める為の口も、伝う雫を拭う掌も、俺にはもう、ない。