甘味料
『何だ、そんなことも知らないのかい?』
「うっせー。で、メープルシロップって何から出来てんだよ」
一刻も早くメープルシロップの謎を解明したかった俺は、出会いの大元となったマシューに電話をかけた。
筈なのに何故かアルフレッドが出やがった。
マシューってアルフレッドだったっけ?
てかマシューって誰だっけ?
マシュー何者。
ま、いいや。
『DDD。メープルシロップは蝶々が集めた花の蜜の事さ』
「・・・はぁ?」
『なんだい、信じてないのかい?』
「いや、だってよぉ・・・」
『蝶々はいつも花の周りを飛んでいるだろう?よく考えてもみなよ。あんな小さな体でそんなに沢山蜜がいるわけ無いじゃないか。彼らだって蜂みたいに巣へ蜜を持ち帰っているんだよ』
「な、なるほど」
『納得したかい?』
「そっか、蝶が集めてたのか・・・。俺様初めて知ったぜ」
手短に礼を言って電話を切った。
テーブルの上にはメープルシロップが付いた白いプレートとフォークとナイフ。
つぃ、と一指し指でプレートをなぞり、口に含むと柔らかな甘味が広がった。
あの可憐で儚げな蝶が花の間をひらひらと舞い、集めた蜜。
改めて味わうそれは、酷く繊細な味がした。