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黒猫と夜

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 もしかして、車にでもひかれたんだろうか。そのあとここまで歩いてきたんだろうか。まああり得る線として、ほかに、心ない人たちの残念な気まぐれで、こんな目に遭わされた…というのも考えられたが、あまりその線は考えたくなかった。まだ生きているのであれば、助けてあげたいが、どうすればいいのか、頭の中が混濁した僕にはわからなかった。下手に持ち上げて、確実に何本かは折れているだろう、この子の骨が内蔵を傷つけてしまうことも考えられたし。
 あ、そうだ、病院、と思いついて、携帯電話から、この時間でもやっている動物病院を探すけど、なかなか見つからない。やっとみつかったその病院に電話しようとしたところで、ふっと後ろから携帯電話を取られて、僕は何がおこったのか一瞬わからないまま、反射的に振り向いた。
「猫?」、とすぐ後ろから声がする。肩を捕まれて、そのまま抱き込まれる。声に聞き覚えがあった。なんで。全然気配なんてしなかったのに。「い、臨也さ…?ん…?」、うん、そうだよ、と返事がある。すぐ近くに温度があって僕は驚いた。「こんばんは、帝人くん」、臨也さんは何でもないように、僕の肩を抱き込み、僕に寄りかかった。重いですよ、と文句を言う僕の言葉を全く聴いていないようで、何してたの?と僕の、さっきまでの目線の先を追う。僕の肩に顎を乗せ、臨也さんは、目線を下へ向けた。そう、僕の足下の猫に。
「何、見てるのかと思ったら…。なんだ、ただの猫か。…その子、そのうち死ぬよ」、臨也さんがそういった。え?、「助けようとしなくても、そのうち死ぬよ、だって、そんなに血がでてるし、もう虫の息じゃないか。まったく、君は優しい子だね、ああ、いや、ただ甘いだけか」。どうも、「褒めてないよ」、あの、電話、したいんで。携帯、返してください、「やだっていったらどうする?」。臨也さんはそう言ってにっこりと笑った。いつものあの、いちいち感にさわるような笑みで。
「…」、僕は、臨也さんとそんな、何度か意味のない会話をして、会話に進展がないのにあきらめて、ひとつため息をして、黙り込んだ。臨也さんはおや、と黙り込んだ僕に、きょとんとした後、にこ、と笑って、冗談だよ、と僕の手に携帯をおとす。ぱっと、抱き込んでいた僕から、腕も離して、それから、足下の猫を横目で見て、うつむいていた僕の手を引いて歩きだした。
作品名:黒猫と夜 作家名:みかげ