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【DRRR】くんかくんか(*^q^*)【火種サンド】

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「さて、青葉君」
「はい、先輩!」

 寝巻きを着て出れば、純情な後輩みたいな良い返事をし、大きな目を輝かせながら見上げ、きっちりと両手を膝に乗せて正座をして待っていた。
 ただしそのズボンの前が明らかに異様な膨らみかたをしていることが残念すぎる。それがなければ、扉に噛り付いて待ってなかった分、ちょっとは許してあげてもいいかもしれない、と思ったのに。
 見渡す限り先ほどの自分のパンツが見当たらないことから、青葉君の横に控えているカバンの中から少しはみ出したビニール袋、あれだろうと予測がついた。

「僕、ちゃんと鍵かけたんだけど、どうやって入ったの?」
「もちろんちゃんとドアから鍵をあけて入りました!でも先輩、あんな簡素な鍵じゃ簡単にピッキングされちゃいますよ?ちゃんとした鍵に付け替えましょうよ」
「…正直、引っ越すべきか考えてるんだけどね…。その鍵、見せてくれる?」
「はい!」

 カバンを引き寄せて開き探りだしたので、さっきから手の中で遊ばせていたボールペンを大きく振りかぶってその先端をカバンに向けた。
 一瞬ビクリと動きを止めた手元から、端っこをボールペンに引っ掛けられたビニール袋が抜き取られる。
 そのままの勢いで投げ放てば、ダーツの様に壁に突き刺さってパンツの入った袋が壁にプラプラと縫いとめられた。このアパートの壁は来たときから穴ぼこだらけなので、特に気にならない。
ただ、その袋の中にパンツだけでなく、さっき突き刺そうとしていた歯ブラシまで見えて、心底うんざりする。

「っ、先輩、何だかすごく上達されてませんか?」
「そう?ペン回しとか、みんなやってるよ。それより、鍵は?」

 先ほどよりもおずおずとした態度で取り出されたのは、嫌になるぐらいピンク色をした金属。
 確かにこの部屋の鍵と同じ形をしている。

「それで、これはどうやって手に入れたの?」
「先輩が体育の授業でいない間に、合鍵を作って戻しました」
「素直に出したってことは、これのスペアも作ってあるんだろうね。盗聴器をつけた時もこうやって入ったの?」
「いえ、あの時はまだ持ってなかったので、ピッキングして入りました」
「そう」

 どう転がってもこの鍵を取り上げたところで意味はないようだ。
 仕方ない。
 この手は使いたくなかったんだけどな。

 手にした鍵をボールペンの代わりに手の中で構えなおす。
 そして反対の手で携帯を探った。
 アドレス帳を起動する必要はない。
 その人の電話番号はいつも着信履歴の1番上に載っている。不在着信で。

「――――あ、もしもし?竜が峰ですが、今お仕事中ですか?」

 目を後輩に向けたまま、耳元から聞こえる爽やかそうで電話を熱烈に歓迎してくる心底残念な声にもうんざりした。
 ああもう、この2人とも消えてくれないかな。
 相打ちとかして死んでくれないかな。
 そんなことを考えていたのがわかったのか、漏れた声を聞き取ったのか、青葉君の目には瞬間的に燃えるような苛立ちが湧き上がって見えた。

「ちょっと先輩、それ誰に電話してるんですか!まさか!!」
「実はちょっと不法侵入と窃盗と覗きの被害に合ってまして。被害届けの出し方とかお聞きしたいんですけど。あ、犯人はここにいます。はい、大丈夫です」

 電話の向こう側では、すぐに向かうから5分待って、と叫ぶ声が響いている。たぶんどこか広い建物の中のようだ。彼の事務所とは違う気がするし、5分というからには出先なんだろう。
 仕事の邪魔になったんじゃないか、とチラリと思う。
 ただそれを心配する気にはなれない。

「ええ、それでは」

 そっと耳を離して通話終了ボタンを押す。
 恨むような視線が向けられていた。
 僕が恨む理由はたくさんあるけれど、恨まれる筋合いは1つもないと思う。

「何でですか!?あの男に助けを求めることはないじゃないですか!!僕はあの契約書があるんですから、貴方が命令すればその通りに動きますよ!?」
「うん、でもそれじゃ足りないんだよ」

 またニッコリと笑えば、咬み付いてきた相手はグッと言葉を詰まらせた。
 この後輩は恐怖感や痛みを自分の幸福や快感に置き換えてしまうのだから、何をしたってご褒美を与える一方になってしまうので困る。
 ただ、それを与えている間は、どんなときよりも僕に忠実になる狗。
 本当に憎いほど使いやすく気持ち悪くて、気持ち悪くて、キモチワルイと思う。