二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

別れの言葉

INDEX|2ページ/3ページ|

次のページ前のページ
 


 「・・・イヴァン?何故ここにいる?」
 「起こしちゃってごめんね。ちょっと挨拶に来ただけだから。」
 「挨拶?」
 「うん、君のお兄さんを迎えに来たんだ。」
 「どういう―」

 意味だ。と続けたかったが、俺は言葉を出す事が出来なかった。
 イヴァンの後ろから兄さんが現れたからだ。

 「な・・・!」

 深い深い青色の軍服は色素の薄い兄さんにとてもよく似合っていた。
 戦場に置ける兄、プロイセンの化身は何よりも凛々しくて誇り高くて。
 畏怖と尊敬と敬愛の混じったなんともいえない視線を集めていた。
 俺は、そんな兄が誇らしかった。
 何とか兄に追いつきたい、早くつり合う国になりたいと日々己を鍛えていた。
 懐かしい。
 混乱した頭でそんな事を考えてしまった。
 
 ・・・違う!そうじゃない!
 何故今その服を着ている?
 数時間前風呂に入ったあと、柔らかなパジャマに着替えたはずだろう?
 そんな土にまみれた髪なんかしていなかったし
 そんな怪我だらけじゃなかったし
 そんな血に染まった斑模様なんて無かったし
 そんな全てを諦めた顔なんてしていなかっただろう?

 ぽつぽつと兄さんの垂れ下がった右腕から指先を伝って血液が床に水溜りを作った。
 満身創痍 そんな言葉がとても似合う兄さんの姿。
 俺は言葉が出なかった。

 「ギルベルト君、ルートヴィッヒ君に挨拶しなくて良いの?」
 「・・・ヴェスト・・・。」

 イヴァンに促され、一歩こちらに近付いた。
 俺は「なんだ?兄さん?」と応えたつもりだった。
 言えたつもりだった。
 俺の唇はわずかに動いただけで明確な音を発する事は無かった。
 その代わりにとでも言わんばかりに、兄さんの声が聞こえた。

 「東には俺がなる。・・・イヴァンも承諾してくれた。だから」
 「っ・・・ぁ・・・・!」
 「だからお前は西で創を癒せ。大丈夫だ。」
 「・・・か・・・!」
 「俺は、大丈夫だ。」
 「そう言う事だから。いいよね?ルート君?」

 俺の返事を待たず、イヴァンは兄さんの肩に手をかけ、後ろへと下がらせた。
 少しよろけながらも兄さんはそれに従う。

 「元はと言えばルート君の自業自得なんだし、このくらい仕方が無いと思ってよ。」
 「貴様・・・!」
 「大丈夫。ギル君は僕が大切にするから。安心してね?」

 普段貼り付けている笑顔の何倍もの笑みを寄越し、踵を返していった。
 2人並んで廊下の奥へと消えていく。

 「待ってくれ・・・!待ってくれ、兄さん!」

 搾り出した声を張り上げれば、イヴァンが嘲笑とも取れる横顔を残していった。
 兄さんは眉間に皺を寄せ、眉尻を下げた困ったような笑顔で俺にこういう。

 「じゃあな、ヴェスト。」


 
作品名:別れの言葉 作家名:akira